Androidのプリインストールソフト

Androidが拡大していく中で問題点も指摘されている:

自由過ぎるAndroidがユーザーに敬遠され始めてる? 悲劇のガラケー化する懸念まで噴出中…

一言で表現するならば、いま市場で次々と発売されているAndroidケータイをめぐる共通の問題は、マルウェアならぬブロートウェア(Bloatware)の大量インストールにありますよ。

マルウェアとブロートウェアは全然違うとかいう突っ込みは置いておくとして(あと妙に訳が緩い?)、Android携帯の問題はプリインストールソフトウェアが増えていることだそうだ。

さまざまな音楽サービスやコミュニケーションソフトなんかを搭載して、かえって多くのユーザーが使わない機能ばかりで膨れ上がった携帯電話の新モデルが次から次へと販売される事態を招きました。

これは以前の携帯において専用ソフトウェアが大量に搭載されていたのを思い起こさせる。日本の多くの携帯にも該当する。

ここで判断を誤ると、かえって消費者がキャリアから離れていく逆効果になってしまうでしょうね。

しかし、この問題がAndroidに大きなダメージを与えるかというそういうことはないだろう。確かにブロートウェアを嫌う消費者はその携帯メーカーやキャリアから離れていくかもしれないが、必ずしもAndroidから離れていくとは限らない

プリインストールソフトウェアの問題は過去Windows搭載マシンにおいても存在した。購入したマシーンに大量のソフトがインストールされていて、簡単に消去することすらできなかった。特に日本メーカーの製品に多かったように思われる。しかし、このことがMicrosoftにとって不都合であったかとそういうことはない。プリインストールを歓迎するユーザーが例えばVaioを買って、嫌うユーザーがDellを買ったとしてもOSを売る企業にとってはどちらでもよい。Windows用ソフトウェアを開発する企業にとっても関係ない。

もちろんプリインストールを嫌うユーザーの一部はiPhoneへと移るかもしれないが、そういうユーザーが多数存在するならプリインストールのないAndroid携帯を発売する企業が出てくるだろう。

ほとんど音声通話でも儲からない携帯電話キャリアにとっては、本当に売上げの確保が頭の痛い問題なんでしょうね…

プラットフォームを提供する企業にとって顧客は最終消費者だけではない。GoogleにとってAndroidの「顧客」は携帯の利用者、携帯の製造業者、携帯電話キャリア、Android向けの開発者全てだ。まずはオープンな環境で開発者を、無料提供で製造業者を、プリインストールによる高収益性でキャリアを寄せ付けていくというのは理にかなっている。ソフトウェアと搭載機が増えていくことで消費者にとっての価値が上がっていくのだ。

日航責任追及の不思議

世間を騒がした日航の破綻の責任はどこにあるのか。

日航破綻「歴代経営者の不作為が要因」 調査委が結論

日本航空の破綻(はたん)原因を調べている同社の独立機関「コンプライアンス(法令順守)調査委員会」(委員長・才口千晴元最高裁判事)が、「(重大な事態に対する)歴代経営者の不作為が要因で破綻した」との結論を出したことがわかった。ただ、刑事と民事の両面での法的責任を問うのは難しいと判断した。

日航の独立機関が破綻原因を調査したそうだ。コンプライアンスを謳い元最高裁判事を長に据えているということで単なる原因究明が目的ではなく、実際に責任を追求するのが目的だろう。その意味で法的責任を問うのが難しいという結論は失敗と言える。

調査委は報告書で、歴代経営陣の経営判断の欠如や危機意識のなさを厳しく指弾。…長年に及ぶ日航の問題が、外部専門家によって改めて浮き彫りにされる。

実際の報告書がどこまで詳細なものかは知らないが、こんな問題点は「外部専門家」でなくても分かる話だし、そもそもコンプライアンス委員会はそういった経営問題の専門家でもないだろう。

このような経営判断の間違い・不作為で法的責任を問うのが難しいのは自然だ。結果が出ないからといって一々責任を追求されるのではリスクのある行動は取れないし、それは株主にも都合が悪い。

また、テロや金融危機、新型肺炎のSARSなどで乗客が減って財政的な危機が生じたのに、緊急融資でその場をしのぐだけで、大胆なリストラなどをして財務体質を改善することを先送りした点も指摘。歴代の経営者が、こうした問題を抜本的に解決しようとしないまま放置し続けたことが経営破綻につながったと結論づけた。

また、テロや金融危機・SARSがあったのは昨日のことではない。株主はパフォーマンスの低い経営者の首を斬る人事権を持っているわけで、問題を抜本的に解決しようとしないまま放置し続けたのは株主も同じだろう

もちろん少数意見は反映されないが、誰も日航の株主でなければいけないと強制しているわけではないので、それで被害を被ったとは言えない(最初から価格に織り込まれている)。

さらに、問題の背景として、「ナショナル・フラッグ・キャリア」(国家を代表する航空会社)という「おごり」があったと分析。「誰かが助けてくれる」といった無責任体質につながったとみている。

これもまた、経営者にだけ当てはまるものではない。従業員や株主を含めたほとんどのステークホルダーが大丈夫だろうと思い込んで行動した結果が日航破綻だ。それが実際に破綻した今、そのつけを誰が払うべきかという話で揉めてるという構図だろう最大の被害者は物言わぬ一般納税者だ

ではこのような「無責任体質」を作ったのは誰か。それは政治・行政だろう。航空会社同士が競争する環境を整えず、コントロールしようとしたことが「誰か(=政府)が助けてくれる」という期待を生んだのではないだろうか。

Twitterへ斬り込むFacebook

FacebookがTwitterとの連携を強めているようだ。

FacebookからTwitterをアップデート

Facebook近況アップデートを選択的にTwitterへと流す仕組みが公開されている。Facebookのパブリッシャーは近況(ステータス)だけでなく、リンク・写真・動画などをフィード・掲示板に流すことができるので、その中で必要なものを選ぶということだ。パブリッシャーの機能はアプリケーションで拡張することもできる。

もちろんFacebookの狙いは、Twitterへの投稿をFacebookへの投稿の一部とすることだ。現状ではTwitterの更新をFacebookに自動投稿することはあっても逆を行っている人は少ない。FacebookからTwitterへのチャンネルを作ることで、メインで使うプラットフォームをTwitterに移行するユーザーを引きとめようということだろう。

Facebookがこの機能でTwitterの領域へ本格的に手を伸ばそうとしているのは、今のところ「ファンページ」にしかこの機能が提供されていないことにも表れている。ファンページとは企業や芸能人のための特殊なプロフィールだ。いわば法人や芸名に相当し、ほぼ個人のプロフィールと同じように使うことができる。

しかし、ファンページでは「友達になる」の代わりに「いいね!」(Like)というボタンがついていて閲覧者が一方的に支持を表明できる。これは相互の承認を必要しない点でTwitterのフォローに似ている。

一対多の関係はFacebookでは成立しにくい、有名人とそのファンというブロックを囲い込んだ。

Wave開発中止のポイント」で述べたように、Twitterが独自のプラットフォームとして成立したのはこの一対多という新しい関係を提示したためであり、Facebookはそれに対してファンページにより「有名人とそのファン」的なつながりを作って対抗しているわけだ。そのファンページにTwitterとの連携機能を加えることはこれをさらに進めるものだ。

Facebookには以前よりファンページによく似た機能としてグループという仕組みを提供してきたが、最近ファンページへと比重を移してきており、ファンページを推進していく強い姿勢が窺える。

Twitterのこの性質は、個人が一種の有名人となりファンを獲得するという環境を提供し、それにのった「プチ」有名人が次々にファンを呼びこむことでTwitterは拡大した。

ただ、この作戦がすんなり進むとは限らない。その理由は個人のプロフィールと著名人・ブランドのファンページという区別だ。Twitterは個人も企業も区別せず一対多のコミュニケーションを提供する。そのため個人が自然に一対多の関係を築いていくシステムが出来上がった。Facebookのファンページも個人で作成できるが、それは個人のプロフィールの延長線上にはない。あくまで個人レベルでの繋がりは相互的な友達関係、企業・ブランドと個人とのは一方的な支持関係という区別は残ったままだ。既に有名な人であればこれでいいが、普通の個人がいつのまにかブランドを作っていく環境にはなっていない。

離婚保険

離婚にそなえた保険が発売されているそうだ。

Divorce Insurance (Yes, Divorce Insurance)

It is sold in “units of protection.” Each unit costs $15.99 per month and provides $1,250 in coverage.

一単位月$16で離婚時には$1,250支払われるとのこと。受け取るためには離婚証明を送付すればいい。購入単位の上限の有無については言及されていない。

So how does the company prevent people who know they are going to get a divorce from signing up?

保険を提供するときにまず問題になるのは逆選択だ。離婚すると得をする保険には離婚しそうな人が集まる。すると保険料が上がり、一段と離婚しそうな人が集まる。

To prevent that kind of adverse selection, the policies don’t mature until 48 months after their effective date

この保険では支払を48ヶ月後からにすることで、今離婚したい人を排除している。生命保険が自殺への支払いを遅らせるのと同じことだ。

And what about other possible selection problems related to people with volatile relationships or a family history of divorce purchasing policies in large numbers?

しかし、加入者の審査はあまり厳密ではないようで、本人の男女関係や家族の離婚歴といった情報を利用することはないそうだ。

the policies, […] , aren’t covered by any state guaranty funds that would honor them if the provider goes bankrupt.

この保険はどの州によって保護されていないようで、母体が破産すると支払いが行われないそうだ。スタートアップということもありまずは真面目なビジネスなのか吟味する必要がありそうだ。

「消えた高齢者」という犯罪

高齢者の消息が掴めないというニュースが世間を騒がしているようだ。

高齢者の安否確認に「答えたくない」…拒否相次ぐ

地域社会が崩壊しているなどという今更な論点につなげる人も多いが(大体消息がつかめなくなったのは最近のことでもない)、一番の問題は年金などの不正受給だろう。極端な話、不正受給がないなら安否確認自体の必要性は薄い。

Cheaters in Social Security plentiful: Officials who go after fraud say it’s emblematic of a much larger problem

死亡届を出さずに親族等が年金を不正受給するというのは日本に限った話ではない。死んでいないことにすればお金が送られてくるのだからこういう犯罪が起きるのは当然のことだ。これを予期していなかったなどというのは無理がある。

[…] the Social Security Administration estimated that during the previous six months it had received more than 75,000 allegations nationally of possible fraudulent payments.

アメリカでも半年で75,000件の疑わしい支払いがあったとのこと。アメリカには戸籍制度もないので問題はより深刻だろう。

a Florida woman, Penelope Jordan, pleaded guilty to a theft charge after she was accused of hiding her dead mother’s body in a bedroom while Jordan collected the woman’s Social Security benefits for more than six years.

違法にソーシャルセキュリティーを受け取るやり口は幾つもあるが、その一つは今回の日本の問題同様に、死亡した親族を隠すことだ。

During that same period, more than 3,700 criminal investigations were closed, more than 300 people were arrested, more than 400 individuals were charged and nearly 800 people were convicted of crimes related to defrauding the agency.

但し、問題への対処は大きく異なる。アメリカ政府はこれを悪質な犯罪とみなして積極的に捜査している。不正受給の存在は社会保障への支持を大きく損なうからだ。同じ半年の間に300人以上が逮捕されている。

Social Security Fraud (pdf)

[…] penalties of imprisonment up to five years and a fine of as much as $250,000.

不正受給は重罪(felony)で、最大五年の懲役と最大25万ドルの罰金となっている。これに加えて民事訴訟の対象となる。

高齢者の所在確認 | 日テレNEWS24

これに比べて日本での罰則は非常に軽いようだ。基本的に死亡届をしていないことに対するペナルティで、年金を不正に受給することに対するそれではない(そちらは通常の詐欺で対応するのだろう)。

医療・介護サービスの利用から安否を確認するというのもいいかもしれないが、まずは年金制度が構造上こういった犯罪の温床になるという認識を持つ必要があるのではないだろうか。同じことは生活保護など他の社会保障制度にも言える。