Posts Tagged ‘Politics’

相対貧困率

October 20th, 2009

mixiで見かけたのでコメント:

貧困率:日本15.7% 先進国で際立つ高水準 – 毎日jp(毎日新聞)

長妻昭厚生労働相は20日、国民の貧困層の割合を示す指標である「相対的貧困率」が、06年時点で15.7%だったと発表した。日本政府として貧困率を算 出したのは初めて。経済協力開発機構(OECD)が報告した03年のデータで日本は加盟30カ国の中で、4番目に悪い27位の14.9%で、悪化してい る。日本の貧困が先進諸国で際立っていることが浮き彫りとなった。

日本の相対貧困率はOECDで27位だそうだ。相対貧困率は次のように定義されている。

相対的貧困率は、国民の年収分布の中央値と比較して、半分に満たない国民の割合。

メキシコ・トルコ・アメリカの次とのことだ。しかしこの指標にはどれだけ意味があるのだろうか。例えばアメリカと日本の給与構造を見ると日本では若年層の給料が低い。年功序列的な給与体系が支配的なためだ。ある時点で年収の中央値の半分に満たない年収の人がずっとそのままという可能性は低い(一流大学を出ても初任給は低い)。極端な話、世代毎の人口が同じで給料はみな年齢引く20の20万倍で労働人口は20才から60才だとすると給与の分布は0から800万円の一様分布で、中央値は400万円、相対的貧困率は25%になる。しかし給与体系は全員同じだ。

それに対しアメリカの貧困層は一生低い給与水準で働きつづける可能性が高い。もともと給与0から800万円の人が一様に分布していて変わらないようなものだ。この場合でも相対的貧困率は25%だがその意味合いはまったく違う。

このような代表値を持ち出して政策を議論するのは危険ではないだろうか。

追記:厚生労働省の公式発表資料はこちら。しかしなぜ新聞社のページではこの手のリンクがほとんど見当たらないのだろう。

追記:相対貧困率とジニ係数の国際比較

モラトリアム法案

October 9th, 2009

昨日、日本ではモラトリアム法案というトンでも法案があると聞いたので検索してみた。

モラトリアム法案了承 住宅ローンは対象外? – MSN産経ニュース

問題が多すぎて何から手をつければいいか分からない。とりあえず予想されるのは:

  • 施行前に高リスクの貸出先から貸しはがしが起きる。
  • リスクの高い融資が全く行われなくなる。

これに対して貸出の強制ないし政府保証が行われれば:

  • 極めてリスクの高い事業と破綻

というところだろうか。前者では金利=資本価格が規制されるため家賃統制などと同様に供給不足になる。後者では失敗した場合のリスクを他人が被るため、銀行・政府の資産を用いて博打が打てる。最近の日本の経済政策は本当にどうしようもないものばかりだが、これはその中でも群を抜いている。こんなこと学部のミクロ経済学で十分に分かるはずだ。もちろん

過度の救済措置は「企業のモラルハザード(倫理観の欠如)を招く」との指摘もある。

全国紙が堂々とモラルハザードに倫理観の欠如という注を入れているのを見れば何の不思議もないとは言える。

日本の衰退と労働環境

September 24th, 2009

フランス人学者Guy Sormanによる日本衰退についてのエントリー:

Japan’s Road to Harmonious Decline from Project Syndicate

From 1988 to 1993, the legal work week fell 10%, from 44 hours to 40. This, as much as anything, helped to bring Japan’s long-running post-WWII economic “miracle” to its knees.

日本の成長が止まったのは労働時間の短縮だと主張しているが、実労働時間は本当に減ったのだろうか。少なくとも自分の知り合いを見ると死ぬほど働いてる人が大多数のように思う。

Moreover, public opinion never supported Koizumi’s policy, which was alleged then, as it is now, to be a source of inequality.

そうだろうか。小泉政権の経済政策は人気があったような気がする。それに対し民主党政権については次のように述べている。

The recent electoral triumph of Yukio Hatoyama’s untested DPJ thus confirmed the popular wish not to follow America’s free-market model. Hatoyama makes no economic sense in declaring that growth is important but that happiness comes first. Nevertheless, this sentiment does reflect the mood of many Japanese.

鳩山政権の政策の多くが経済学的には意味不明なのはまさにその通り。

しかし、今回民主党が劇的な勝利を遂げたのでのは政策や思想の問題なんだろうか。むしろ近年選挙結果の振れ幅が異常に大きくなったことのほうが印象的だ。

one must ask whether today’s Japanese are willing to work more in order to catch up with the United States and to lead Asia development

いやだから、これ以上働くのは無理だと思う。どこをどう見てもアメリカ人のほうが働いていない。

どうも記事全体がメディアでの日本の報道を丸飲みにして執筆されているように思われるのだがどうだろう。まあ日本政治についても、マクロ・成長論についても詳しくないので何とも言えないのではあるが。

フランスがトービン税を支持

September 22nd, 2009

トービン税自体の是非よりも、大統領が自らその単語を利用していることが驚きだ。日本の政治家がトービン税を持ち出すなんて全く想像できない。

BBC NEWS | Business | Sarkozy to press for ‘Tobin Tax’

Mr Sarkozy wants a levy known as a Tobin Tax to be applied to every financial transaction.

The move is aimed at cutting excessively speculative trades and encouraging long-term decision-making.

サルコジ仏大統領が投機抑制のためにトービン税の導入を呼びかけている。

But senior EU officials told the BBC that the chances of getting a global agreement were “less than minimal”.

実際に世界的な導入がなされる可能性は低いとしているものの、政治の主流に取り上げられたのは大きな出来事だ。

トービン税とは国境を通貨取引に非常に小さな税金を掛けるという案だ。税率は元々1%が提案されているが0.005%まで様々だ。投機家以外にはほとんど影響を及ぼさない額だが、一日に大量の通貨を売り買いする投機家にとっては大きな障害となる。

Foreign Exchange Trade

元々の目的は為替市場の安定だが、通貨の取引高は一日3兆ドルを越えており僅かな税率であっても莫大な税収が見込める。そのため、主に途上国支援・貧困根絶・環境改善などを目指す多くの団体が税収目当てにトービン税の導入を訴えている。記事中でも

While it was originally supposed to be used for aid for developing countries, it could now be used to fund some of the bailouts in the financial industry or the multi-billion dollar stimulus packages under way to kick-start economies around the world.

そもそもの目的が途上国支援かのように扱われている。確かに世界規模の公共財の提供にはまたとない税金ではあるが、先の引用にあるよう多くの国々の協力が必要であり実際に導入される見込みはない。

ナショナリズムとリベラル

September 22nd, 2009

どっかで昔書いたことがが巡回先のブログで論じられていたので紹介:

Ben Casnocha: The Blog: The Nationalism of Liberals vs. Conservatives

Conservatives tend to be proud nationalists. They poll higher on questions that ask, “Are you proud to be an American?” There’s the image of conservatives with their big American flags and trucks. Conservatives’ nationalism, at its strongest, tends to manifest in hawkish foreign policy.

保守派はナショナリストだ。日本では保守主義の定義が難しいが、右派が国旗や国家に対する愛着と言う意味でナショナリスティックと言えるだろう(むしろそうであるかが右派・左派を分けれているとさえ言える)。

Yet at the same time, they believe strongly in American jobs and workers. Narratives around the “little guy” being screwed by big bad multinational corporations is very much part of the liberal imagination. So liberals’ nationalism, at its strongest, tends to manifest in economic nationalism. In particular, protectionism.

しかし、ここで指摘されているのはその左派=リベラルも実はナショナリスティックだという点である。これは保護主義に現れている。自国労働者を守ろうという意見は自国を他国に比べて優越するという考えにほかならない。

Bottom Line: Liberals make fun of conservatives’ patriotism, but in fact liberals’ preferred economic policies are more dangerously nationalistic, and full of contradictions.

最後に著者Ben Casnochaはリベラルが保守派の愛国主義を批判しながら、経済政策でナショナリスティックであるのは矛盾だとして指摘している。

全くその通りではあるがこれがリベラル(=米民主党)への批判になっているのかと言えば疑わしい。そもそもリベラルを何を持って定義するかにもよるが、ある国の中で議論する際に相手を説得するための唯一の(正しい)方法はある政策が相手にとっても得なんだと示すことである。ここで自国民の利得を優先するのは矛盾ではないし、愛国主義でもない(むしろ自国民の利得を超越した価値を愛国心に見出したときに愛国主義になるといってもよい)。ここでたまたま保守派が推す自由貿易が保護主義よりも望ましいのはナショナリズムとは関係なく単に経済理論によるものだ。

ただ、だからといってリベラルが保守派愛国主義をバカにすることもできない。そもそも国という概念が恣意的である以上、愛国心は必要な概念である。アメリカで愛国心が非常に持て囃されるのはこのせいだろう。移民が多い国では国という概念は希薄だ。ビザや市民権という意味では重要だが、社会の枠組みとしては弱い。別の言い方をすれば、社会ために何かしようという時に「アメリカ」という枠組みを採用する必然性がない。地元のためとか自分たちの民族的なコミュニティーを思い浮かべる人が多い。これだけ愛国心を祭り上げていても再配分政策が全くされないのもそうだ。