変わるコンテンツの主流

ネットの主役は誰なのか。一つの指標は誰が一番帯域を使っているかだ。以下の表は北アメリカにおける帯域使用率トップ10だ(出展)。

Netflix’s Squeeze — No Not That One, The Other One

左側がアップストリーム、右側がダウンストリームを示している。アップストリーム(一般ユーザーからの発信)では相変わらずP2P(BitTorrent)が首位を占めているが、注目はダウンストリーム(ユーザーにとってのダウンロード)だ。なんとNetflixが20%を超える帯域を利用しており、その割合はHTTP、つまり通常のウェブブラウジングに迫っている。ビデオ配信だけ見てもYouTubeの二倍だ。その他にも大量の画像を共有しているFacebookや音楽ファイルをダウンロードさせるiTunesがトップ10に食い込んでいる。

映画やテレビにおいてもネットでのストリーミングへシフトが起きているのが分かる。日本ではまだこういったコンテンツのストリーミングはあまり行われておらず、今後このセグメントでどんなことがおきるか興味深い。

おかしなことばかりの「奨学金」

どうしようもない記事なのでブログでも。

奨学金の条件「社会貢献活動への参加」追加へ

文部科学省は、国費を財源とする無利子奨学金の貸与を大学生らが受ける際の条件について、成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた。

税金が入った無利子奨学金を受ける際の基準に社会貢献活動が追加されるというニュースだ。ツッコミどころがありすぎて何から始めたらいいか分からない程のダメさ加減だが三点ほど。

名称がおかしい

まずは、何度も指摘しているが、「奨学金」という言葉遣いだ。無利子奨学金というのはあくまで貸与であって、政府の補助は「無利子」の部分でしかないはっきり教育ローンと呼ぶべきだ

目的に対して手段がおかしい

次に、この政策はその目的を果たすと思えない。

同省は、公費で学ぶ学生に社会還元の意識を根付かせたいとしている。

どうも希望と現実が混同されているようだ。社会貢献活動を義務付けると社会還元の意識が芽生えるというメカニズムを教えて欲しい。税金を払わせると寄付の心が芽生えるだろうか。

目的自体がおかしい

また、目的を達成するかどうか以前にその目的の設定に問題がある。奨学金や教育ローンの政策目的は社会的に望ましい(教育)投資に対して、補助金や流動性を提供することだ。決して「社会還元の意識を根付かせる」ことではない。条件・義務を増やすことはこの本来の目的に反するし、二つの目的があるとそれが達成されているかを測定するのも難しくなる。

ちなみにこのように一つの政策で複数の目的を達成しようという試みは、しばしばやりたいことがあるにも関わらず他人を説得できる策が思いつかないときに行われる。この場合であれば、「社会貢献活動を増やす」という目的があるのに、それを達成する有効な策がないために教育ローンという入れ物を利用している(どっかの外郭団体が無料ボランティアをほしがっているのだろうか?)。

社会貢献活動がそんなに重要なら、兵役のように全国民に義務付けてしまうこともできる(みんなが社会還元意識をもったほうがいいだろう)。それをしないのはそれだと支持を得られないからで、かわりに立場の弱い教育ローン受給者だけに絞ったのだろう。

最期に一文だけ繰り返し引用する。

成績や世帯収入に加え新たに「社会貢献活動への参加」を追加する方針を固めた

貧しい家庭の出身で一定の成績を修めている人にたった今から(!)社会貢献をしろと言っているようにしか読めない。よくもまあそんなことが言えると思う。

アフリカの大きさ

一言で言うと、アフリカって超でかいよね、という話だが絵になると分かりやすい。

Look what my good friend KaI Krause has done. The true size o… on Twitpic

真ん中のアフリカ大陸にアメリカ、中国、インド、ヨーロッパ、そして日本が敷き詰められている(日本は南東の端っこだ)。右側に世界の国々が面積順に並んでいる。

A survey with random American schoolkids let them guess the population and land area of their country. […] the majority chose “1-2 billion” and “largest in the world”, respectively.

左下を見ると、アメリカの学校の生徒にアメリカの人口と面積をたずねたところ、過半数が10-20億人で世界最大と答えたという残念なお知らせが紹介されている。

Even with Asian and European college students, geographical estimates were often off by factor of 2-3.

アジアやヨーロッパの大学生でも二倍三倍はズレがあるということ。その原因の一つは面積を適切に表示しないメルカトル図法にあると主張している。

これはWikipediaのメルカトル図法のページにある二つの地図だ。上がメルカトル図法、下が面積比を維持するサンソン図法だ。メルカトル図法で緯度の低い地域が小さく表示されることや、赤道がおそらく多くの人が思っているよりも南にあるのが分かる。小中学校などで地球儀や異なる投射法に基づく地図を利用するのも大事だろう。

喫茶店のグルーポン利用

グルーポンについてはTogetterでも話題になったが、喫茶店オーナーによる生々しいグルーポンの感想が反響を呼んでいる。

Posies Cafe » Blog Archive » Groupon in Retrospect

グルーポン(ないし同様のクーポンサイト)を利用しようという飲食店経営者は必見の内容となっている。

We were going to offer a $6 for $13 (pay $6 and get $13 worth of product) because John told me people really respond to deals that are over 50% discount.

この喫茶店では$13の商品を$6で提供しようというクーポンを売りにだしたそうだ。

John told me that when the consumer pays less than $10, Groupon usually takes 100% of the money. What?! He reassured me that most customer buy more than the $13, and that we would never have to advertise again after taking advantage of their network. In my mind I thought “false. You can never stop advertising as a business,” but outloud I said, “Ok, let me think about it.”

グルーポンのセールスレップは$10以下のクーポンの場合、全額をグルーポンが取るのが普通だが、顧客はクーポン額面以上の買い物をするし、二度と広告にお金をかける必要はないから割に合うと主張したそうだ。オーナーは広告が必要なくなるという意見には懐疑的だった。また、お店のメニューを見る限り$13もあれば食事に飲み物をつけてお釣りが来るぐらいで、額面以上の買い物をするというのも疑わしい。

I called him back and said we would have to get at least 50% to cover our costs of product…

結局、売上の半分がグルーポンの取り分ということでクーポン販売が決定した($10以下なら全額というのは交渉上のテクニックだろう)。50%即ち$3は食材の費用をカバーする。

After three months of Groupons coming through the door, I started to see the results really hurting us financially. There came a time when we literally could not make payroll because at that point in time we had lost nearly $8,000 with our Groupon campaign.

この喫茶店にとってグルーポンは大失敗で、最終的に$8,000もの損失を出したということだ。この原因を二つ上げている。

What I didn’t think clearly enough about was that that margin we mark up is what covers all of our other costs… like staff, rent, utilities, etc. Our overhead is roughly $25,000/month, and this decision was about to make it so that we didn’t cover any of those other costs.

一つは五割を超える割引に加え、グルーポンの取り分が五割ということで、クーポンの売上は変動費しかカバーしなかったことだ。お店の運営には賃料や人件費など固定費がかかるためこれをカバーできなければ赤字になる。

When I talked to Lucinda today, she asked if there was a cap on how many were sold to help protect the business from too much loss, and the simple answer is, no.

もちろん、キャパシティーを余らせるよりは割り引いて売ったほうが利益は増える。しかし、(今回の)クーポン発売では販売額の上限が決まっていないために赤字が拡大してしまった。

When you sign up for Groupon, you are agreeing to sell as many as get sold… and why would Groupon want it any other way? They get half of the earnings.

グルーポンは(コストの負担なしに)売上の半分を取るためより多くのクーポンを売るインセンティブを持っている。長期的にクライアントの利益を守るためには販売額の上限を適切に設定する必要に迫られるだろう

また、キャパシティーの活用=イールドマネジメントの観点から言えば、クーポンの利用条件が単純な期間指定なのもクライアントにとって都合が悪い。あくまでキャパシティーが開いている場合にそこを低価格で埋めるというのが望ましい。予約システムとの連携が出来ればクーポンの有用性は高まるはずだ

At the same time we met many, many terrible Groupon customers… customers that didn’t follow the Groupon rules and used multiple Groupons for single transactions, and argued with you about it with disgusted looks on their faces, or who tipped based on what they owed (10% of $0 is zero dollars, so tossing in a dime was them being generous).

もう一つの原因は客の質だ。グルーポンを使ってくる顧客がルールを守らなかったり、適切にチップを払わなかったりする事例が頻発したそうだ(クーポンを利用する場合、クーポンを使わない場合の注文額に基づいてチップを払うのが普通だ)。クーポン利用に関する費用、この場合は条件を理解させ守らせるためのコスト、をクライアントばかりが負担するという問題がここでも生じている。クーポンを発券する企業(グルーポン)にとっては、優良なクライアント企業を選んでくるだけでなく、行儀のよい顧客を揃えることも重要になる。

Bloombergのオンライン戦略

Bloomberg(ブルームバーグ)といえば、金融機関向けの端末をリースする会社だが一般向けのニュース配信にも乗り出そうとしているそうだ。

Bloomberg’s move into consumer media

Said Doctoroff, “We want to gain a greater audience for Bloomberg News, which translates into greater influence, which translates into more market-moving news, which enables us to sell more terminals.”

CEOによるとBloombergがニュースを一般に公開することでより大きな影響力を持ち、それが端末のさらなる販売につながるとのこと。

Those professionals really don’t care if the news is on a Bloomberg website or not; as far as the market is concerned, the information is public as soon as it hits the terminal in any case.

これは妥当な戦略だ。まず、ニュースは一度公開されてしまえば、それに従って市場取引が行われる。そもそもニュース自体には著作権の保護はほぼ(※)ないわけだから、例えネットに公開しなくても誰かがそうするのを止めることはできない。よってそうするのがBloomberg自身であってもいい。

(※)一応、Hot News Doctrineなんかはあるが…。

The web is simply too big: no matter how much beefed-up Bloomberg content is “dumped” onto it, that’s never going to suddenly make it a much more attractive alternative to a purpose-built news and information terminal designed very specifically for financial professionals.

Bloomberg自身がニュースをウェブに公開することでウェブ全体の情報が優位に増えるわけではなく、自社の情報端末の売上がそれによって左右されることはない。ネットに情報があるなら端末を買わないという客はすでに客であるはずはないわけだ。

The point is that Bloomberg can profit from an asymmetry: if a Capitol Hill staffer reads B Gov a lot, she’ll be more likely to talk to the Bloomberg commodities reporter calling from New York or Sao Paulo.

逆に、Bloombergが金融以外の分野で影響力を上げることは、端末を利用するユーザーにとって重要な情報を手に入れる上でプラスに働く

Bloombergは本業である金融機関・専門家という市場への外部性を狙って一般的なニュース配信市場に参入するという形だ。端末が扱う情報は極めて時間にセンシティブなのでこれが可能となる。新聞社や放送局が情報流通経路へのコントロールを失うなかで、それ自体で利益を生むことの難しいニュースを誰が担うのかに注目したい