Advertising AgeにGoogleでChief EconomistをつとめるHal Varianによるタブレットと出版業界との関係についての発言がまとめられている(今週の水曜日にJ-schoolであった)。
Google Exec Says Newspapers Need to Re-Think Their Models – Advertising Age – Digital
まず新聞業界が直面している問題についてはこう述べている:
The trouble is the audience for news has been declining. Newspaper circulation has been slipping since 1990 and has plummeted in the past five years. Online, only 39% of internet users surveyed by Pew said they spent time online looking for news.
紙の発行数が落ちているにも関わらず、オンラインでニュースを探している人は39%しかいないという。
“The verticals that drive traffic are things like sports, weather and current news, but the money is in things like travel and shopping,” says Mr. Varian. “Pure news is the unique product that newspapers provide, but it is very hard to monetize.”
しかもそのオンラインで人々が読むのはスポーツ・天気予報・最近のニュースなどであって、新聞社にとってお金になる旅行やショッピングではない。そういったものは専門のサイトにいけばいいからだ。紙の流通費用によってさまざまな情報をバンドルして売っていた新聞はその能力を失っている。本当に新聞特有の情報である純粋なニュースは(著作権の保護もなく)利益にするのが非常に難しい。
Typically, 53% of newspaper spending goes to traditional printing for distribution — costs eliminated through digital distribution — compared with 35% on what the Google exec called the “core” functions of news gathering, editorial and administration.
これに対抗する一つの方法は支出を減らすことだ。新聞社の支出の53%は印刷や配達などに充てられており、ニュースを作ることには35%程しか使われていないそうだ。よって、オンラインに移る過程で前者の支出をカットしていくことが収益改善につながる。The Huffington Postなどがいい例だろうか。
Google wants to help publishers use web technology to grow, Mr. Varian said. “I think papers could better exploit the data they have. They need better contextual targeting and ad-effectiveness measurement.”
逆に収益を増やす方法としては、Googleらしく情報の活用を上げている。オンラインでの行動は現実世界のそれに比べて情報収集が容易だ。これを利用すればより効果的な広告を打つことができる。個人の情報に基づいたきめ細かな価格差別によって収益率を上げることも可能だろう。
“We know there will be eventual competition from other devices, like the Kindle,” he said, “and of course there’s still the whole web. I don’t think the tablet should be viewed as the be-all and end-all of distribution.”
iPadがiPodのようにプラットフォームを支配して、消費者余剰を吸収してしまうことについてはKindleのような競争相手がいるので大丈夫だとしている。
“Users will likely engage with the tablet during peak leisure hours, and you would imagine that’s very attractive to publishers.”
むしろタブレットの存在はニュースが読まれる時間を増やすことにつながるため、新聞社にとっては魅力的だという。これはまず全体のパイを考えるエコノミスト的な視点だ。
しかし、一つGoogleにとって都合の悪いことが抜けているようにも思われる。確かにiPadがe-bookの市場を独占し余剰を吸収することはありそうにない。しかし、オンライン収益の鍵となる広告の市場はどうだろう。Googleが圧倒的なシェアを握る広告市場において、Googleはオークションの設計を通じて市場支配力を行使できる。もちろん既存のチャンネルよりも効率的なチャンネルを可能にした企業が利益をえるのは正当なことだが、それによって実際にコンテンツを生産している人間の利得が減ることはコンテンツ生産のインセンティブを与える著作権制度の趣旨からすると懸案事項だろう。
Mr. Varian’s list of suggestions doesn’t include pay walls, such as the New York Times’ plan for a metered approach to charging users. “It’s too easy to bypass,” he says.
ちなみにNYTの有料化については、簡単に回避できるという技術的な理由でうまくいかないとしている。