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Tweetie買収

April 9th, 2010

TwitterがクライアントソフトウェアTweetieの開発元であるAtebitsを買収したというニュース

Twitter Acquires Atebits, Maker of Tweetie – Bits Blog – NYTimes.com

This marks a new strategy, as Twitter makes its first foray into providing a mobile and desktop client itself. On Friday, Twitter also announced that it helped Research in Motion build an “official” Twitter app for BlackBerrys.

TwitterはBlackBerry用のオフィシャルクライアントをBlackBerryと共に提供すると発表している。

In the past, Twitter has focused on its Web site, twitter.com, and left the development of Twitter mobile clients up to start-ups like Tweetie, Twitterrific and UberTwitter.

これはオフィシャルサイト上の開発に集中し、モバイルクライアントの開発はサードパーティーに任せる方針から転換と捉えられている。

developers have been getting nervous that Twitter plans to build or buy more apps for itself, which could put them out of business.

しかし、これはTwitterというプラットフォーム上でアプリケーションを開発している企業にとっては脅威と映る。オフィシャルなクライアントはサードパーティーのクライアントに対して有形無形のアドバンテージがあるので当然ではある。これはAppleがMac用の基本的なアプリケーションを自社で提供し始めたときのサードパーティーの反応と同じだ。買収された企業はいいが、それ以外の企業にとっては突如競合相手の一つがプラットフォーム本体に変身したようなものだ。

Fred Wilson [...] stoked those fears in a blog post in which he wrote that many third-party Twitter services, including mobile clients like Tweetie’s, are features that Twitter should offer itself. Instead, he recommended that developers focus on other kinds of services, like business tools, analytics or gaming.

このような問題はどんなプラットフォームにおいても微妙なバランスを要するもので、関係者はTweetieのようなソフトウェアは本来Twitter自身が提供すべきもであって、サードパーティーはビジネスツール・解析ソフト・ゲームなどに専念すべきだといっている。これはTwitterが自社で提供するソフトウェアを自ら制限することで、サードパーティーの開発に悪影響を与えないようにしようとする発言だ。

Twitter, which raised $100 million in September, has the cash to go on a shopping spree. It cannot hire engineers quickly enough to support the explosive growth of the company, so buying other features is a way to grow quickly.

では何故、自社開発でなく買収を行うのか。これはTwitterの成長に追いつくほどエンジニアを採用するのが難しいためで、新しい機能を買い開発者も抱え込むのは理にかなっている。既に検索サービスや位置情報サービス企業も買収済みだ。

Twitter will offer it for free and rename it Twitter for iPhone.

TweetieはこれからTwitter for iPhoneとして無償提供される予定だ。

Googleのプラットフォーム戦略

December 22nd, 2009

Googleのオープン・ソース戦略について以前書いたこと(オープンソースは裏切れない)と同じ論旨のエントリーがTechcrunchにあった:

Googleの「オープン・ソース万歳」はけっこうだが、いいとこ取りなのは否めない

Googleがオープンなのは自社にとって都合がよいときだけだ。Googleが検索アルゴリズムや広告システムのソースコードやデータを公開することなどあるまい。こうした分野の秘密こそがGoogleに巨大な収益をもたらすカギだからだ。

その通りだ。Googleは利益を出すことを目的とする営利上場企業であるし、そもそも利益を出さなければ事業は維持できない(参考:非営利と営利との違い)。これについては前にこう書いた:

Googleは無料であること・オープンであることが重要・必要な場合にはオープンソースを使い、コアなビジネスはプロプライエタリにすることで利益を上げているのだ。

Googleの行っているビジネスはプラットフォームビジネスだ。プラットフォームをコントロールし利益をあげるためには、そのプラットフォームが大きくなくてはいけない。MicrosoftがWindows向けのアプリケーション開発を促進したり、Intelがx86上のシステムや関連コンポーネントを歓迎するのと同じことだ。

OSや携帯やブラウザや本や、その他あらゆる事業分野がオープン化し、無料化してもGoogleには失うものは何もない―検索と広告で収益が上がる限りは。

これは半分正しく、半分間違っている。Googleは携帯・ブラウザ・本をオープン化・無料化することでそこから得られるはずの利益を失っている。Google全体としてはオープン化・無料化した上で検索・広告で収益をあげたほうが最終的に利益が多いというだけだ。

マニフェストの中でプロダクト・マネジメント担当副社長のJonathan Rosenbergは「オープンシステムは常に勝利する」と雄弁に説き、Google社員に対して製品をデザインする際にはオープンさを重視するよう求めている。

それがGoogleが社員に対してオープン化を推奨している理由だ。ここのソフトウェアを開発する部署にとってはオープン化は利益を生まない。無料である限りそれはコストセンターだ。プラットフォーム上で動くアプリケーションから稼ごうという誘惑は常に存在する。そこで重要となるのがオープンソースだ。オープンソースは遡及的なプロプライエタリ化を著作権法により防ぐ。誘惑に乗らないことに法律を使ってコミットするのだ。以前のポストを引用すれば次の通りだ。

サービスやAPIはいつでも引っ込めることができるがオープンソースのソフトウェアを引っ込めることはできない。企業はソフトウェアをオープンソースで公開することにより、それが永遠に公開されつづけることにコミットできるのだ。

これにより、Googleは自分たちが生み出した携帯プラットフォームを後で囲い込んで課金するのではという懸念やそのプラットフォーム自体が提供されなくなるのではという不安を効果的に払拭できる

これはIntelがArchitecture Labでとった戦略と同じだ。IntelはArchitecture Labでの研究の多くを公開・オープン化し、自社内の他の事業部を贔屓しない政策をとった。これによりx86上での開発に参加する企業は安心して活動できた。

デジタル化した市場では企業の成功がネットワーク経済・プラットフォーム市場といった性質の理解に大きく左右される。製品そのものの質よりもそれをどう販売・運用するかが成功の鍵となるのは皮肉なことだ。

マンガ輸出振興はやめよう

December 7th, 2009

よく日本独自の文化としてマンガを新しい輸出産業にしようって話があるけど、本気なんだろうか:

日本発ポップ・カルチャーのすすめ〜日本の電子書籍市場

リンク先の基本的主張を要約すれば次のようなものだ:

  • 電子書籍分野で日本は進んでいる
  • その規模は464億円
  • そのほとんどは携帯向け
  • 携帯コミックは成熟した日本から生み出された新しい書籍文化
  • 携帯音楽市場は1000億円規模で世界一
  • 携帯コミックは次のコンテンツ市場
  • 海外展開も始まっている
  • 製造業は限界なのでコミックのような新しい産業を育てる必要
  • コミックに加え“カワイイ”文化やアニメ・映画

四つほど論点を上げたい。

  • 日本の携帯書籍市場が大きいのは日本独自の理由
  • 製造業は限界ではない・輸出だけ振興してもしょうがない
  • 産業育成は必要ない
  • 本気でポップカルチャーが一大輸出産業になると思ってるの?

日本の携帯書籍市場が大きいのは日本独自の理由

では何故日本の携帯電話上で書籍の販売が盛んなのか。それは日本では携帯プラットフォームが非常にクローズドだからだろう。寡占的なキャリアは端末メーカーと協力して比較的強いDRMと簡単な支払い手段を用意した。これにより、著作権管理の強固な携帯プラットフォームでのコンテンツ提供が広まったが、逆に言えば、それが市場が大きな理由であって日本の携帯向け書籍・マンガが特に魅力的だからではない。同じものを海外にもっていったからといって成功する根拠にはならない。通勤時間が異常に長いという日本固有の影響もあるだろう。

製造業は限界ではない・輸出だけ振興してもしょうがない

製造業ベースの国際競争力では、今後、輸出関連産業が飛躍的に大きく伸びる可能性は小さく、これまで、ハイテク化や高付加価値化によって 立つという図式を日本の産業界は追求して来ましたが、このモデルだけでは限界があると思います。

ハイテク化・高付加価値化がどうして限界があるのかよく分からない。自動車産業はうまくやっているように見えるし、海外に目を向けても半導体や携帯など製造業が輸出の柱となっている国は多い。金融サービスや映画などのコンテンツを大々的に輸出しているのはアメリカだけではないだろうか。また輸出を行うのは輸入をするためであって、限界(?)を越える必要なんてない。海外で資産を買い占めたいのだろうか。

産業育成は必要ない

コミックのような成熟社会の文化に根ざしたコンテンツ配信をビジネスモデル化し、産業として育てていく途を加える必要があります。[...]産業育成として、コミック に加えて、東京発の“カワイイ”文化や世界で受賞相次ぐアニメや映画まで含めて配信ビジネスとして仕組んでいくことが、新しい日本の発展を支えるのではな いかと思っています。

産業育成一般に当てはまる話だが、政府に輸出産業を予知する能力はない。日本のポップ・カルチャーがそんなに素晴らしいなら、ほっとけばいい話であってどうにか振興しようというのは余計なことだ

本気でポップカルチャーが一大輸出産業になると思ってるの?

では日本のポップカルチャーが製造業に代わり外貨を稼いでくるようになるのか。

文字と比べて、ビジュアル系のコンテンツは映画を含めて、他文化の人達にも理解され易く、日本発のポップ・カルチャーとしての情報発信は十分可能です。

確かにマンガのようにビジュアルなものは文字だけのコンテンツに比べれば他文化の人にも理解されやすいかもしれないが、食料や自動車のようにはいかないだろう。

アジアを中心に、更に最近では欧米においても、コミック、アニメや“カワイイ”ファッションなど、日本発のポップ・カルチャーは注目を集めています。

変わったものとして注目を集めるのと輸出産業になるというのは全く違うことだ。いくらか輸出できるだろうけど、製造業のあとをつぐなんて不可能だろう。海外で一番大きなビジネスになっている日本文化は寿司だろうがそれだって普通の料理だと考えているのはごく一部だし、海外で出されるのは(多くの場合現地の人が)現地向けにアレンジしたものだ。海外に寿司レストランがたくさんできて日本に外貨が流れ込んできているという話も聞かない。

そもそも文化的なものは輸出するのが難しい(参照:日本でFacebookは生まれない)。日本にあるものをそのまま海外に持ち出しても一部のマニアに受けるのが関の山だ。本当に産業として成立するためには、海外の人たちがどんな日本風コミック・アニメ・ファッションを欲しているのか知る必要がある。だが、これは日本人が日本にいるだけでは非常に難しい。誰がスパイシー・ツナ・ロールやレインボー・ロールを作ったかという話だ

むしろ日本に独自性があって海外でも受けるというコンテンツで言えば、こちらの「マカオで“大人”の展示会、日系が海外攻勢」のほうが見込みがあるのではないだろうか:

インドから来たバイヤーは「日本のアダルト産業は世界的にも評価が高い。日本の商品をインドで売りたい」と興味がある様子。また一般客として来場した香港人男性は「今まで見たことがない商品があって面白い」と話した。

ネットのルールなんてない

December 7th, 2009

ネガティブ記事は好きではないが、これはどうかと思ったので突っ込んでおく:

マードック氏にグーグルが譲歩 「ネットのルール」はどう変わる インターネット-最新ニュース:IT-PLUS

ここしばらく話題になっているマードックとグーグルとの対立についての記事だ。

デジタル技術や伝送技術などの進歩がネットという新たなコンテンツの流通経路を生み出した。しかし、技術進歩やネットがコンテンツを無料にしたわけではな い。ビジネスモデル(無料モデル)や権利侵害(違法コピーや違法ダウンロード)がコンテンツを無料にしたのである。即ち、技術ではなく人がそうしたに過ぎ ない。ウェブ2.0以来ネット上に定着した「コンテンツは無料」という風潮は不可逆なものではないのである。

「技術ではなく人がそうしたに過ぎない」というのはどういう意味だろう。最終的に行動するのは人間なのだから「人がそうした」と言うならなんだってそうだ。技術が変化し、それに対応して人の行動が変化したのだ。「風潮」というものは市場参加者の最適行動の結果に過ぎない。確かに「コンテンツは無料」という風潮は不可逆ではないが、そもそもの原因である技術進歩の流れが変わっていない以上、人の行動も変わらない。

もちろん、「無料」の変革は大変である。一部の新聞社が有料化してもユーザーは無料のところに流れるだけだろう。また、違法コピー・違法ダウンロードを制 圧しない限り、無料の変革はニュース記事を超えてコンテンツ全般には広がらず、「闇の無料の世界」が拡大するだけである。闇金業者が繁盛するような世界と 同じにしてはならない。

技術的に違法コピー・違法ダウンロードを制限することはとても難しい。よって「コンテンツは無料」というのが支配的な価格付け戦略になっている。一体これをどう解決するというのだろう。ネットは自由みたいな原理主義に加担する気は全くないが、技術進歩に逆らうのはコスト的に難しい

コンテンツを利用して無料モデルで儲けているグーグルなどのネット企業の収益を、コンテンツ側に還元しなくていいのかという問題である。米国ではフェアユース規定が還元しなくていいことの根拠となっているが、結果として「フェア・シェア」が実現されていないのでは、洒落にもならない。

いい悪いの基準が全く分からない。「フェア」という言葉を定義せずに使っても意味がないだろう。コンテンツ企業がコンテンツを提供し、検索エンジンがそれを表示しているのは両者にとって、そうすることがそうしないことより得だからだ。これはある意味「フェア」ではないか。結果として実現される配分は法制度に影響されるが、それを論じるには「フェア」の定義についての合意が必要だ

つまり、マードック氏が第一歩を踏み出し、グーグルはとりあえず最低限の対応をしたが、その結果としてネットの常識がどう変わるかはこれからの勝負なのである。

「ネットの常識」でビジネスが動いているのではないビジネスが動いた結果としてのパターンが「ネットの常識」なのだ。マードック氏がグーグルから譲歩を引き出したのは彼がコンテンツ生産において市場支配力を持っているからだし、譲歩しか引き出せなかったのはグーグルが検索市場のリーダーだからだ。

日本のマスメディアはネット関連の問題では常に受け身であったが、今回ばかりは、行動するなら早く動くべきである。ネット上でのビジネスの「ルールづくり」が常に米国で行われるというのは、もう止めにすべきではないだろうか。

アメリカで「ルール」ができて日本に波及するなんてことはない。アメリカで生じた変化が日本でも生じることで結果としてのパターンが一致するだけだ。技術は国境をまたいで波及するのでそれは自然なことだし、ネット関連の技術変化はアメリカから生じるので、「ルール」がアメリカから日本にやってきたように見えるがそれは表面的な問題に過ぎない

追記:複数均衡を選択するという意味での「ルール」ならあるかもしれないが元記事の話とは関係ないだろう。もし無料均衡から有料均衡へ飛ぶという話ならそれはカルテルだ。

Big Sister:風俗の多方向市場化

November 30th, 2009

最近Freemiumなんていう言葉が話題になっている。わかりやすく(?)言うと、ネットワーク効果のある市場で、マージナルな価格をゼロにすることで利用者を増やし、収益は価格差別によりインフラマージナルな利用者から回収すればいいというビジネスモデルだ。これはネットワーク効果が大きく、支払意志額の小さな消費者が多く(=需要曲線が強く下に凸で)、価格差別が容易な場合には有効な戦略だ。

しかし、収益をあげるのが無料で財・サービスを手に入れるユーザーの一部でなければならない理由はない。三種類以上の参加者のいるマーケットであれば、財・サービスのやりとりをする以外の第三者から利益をあげることも当然可能だ

無料の新聞がそれはその一例だ。新聞はニュースなどを読者に提供する一方、広告主から収益をあげる。読者が増えれば増えるほど広告収入が増えるため一定の条件下では読者には何も課金しないことも正当化される(例:小額の支払のための費用が高い)。

Big Sister(NSFW)はこの収益体制を風俗に適用したものだ(「夜のオンナ」の経済白書という本で紹介されているそうだ via Feel Like A Fallinstar)。かなり有名なもののようでBloombergでも記事になっているしWikipediaにも説明がある。Big Sisterのビジネスモデルは次のようなものだ:

  • 無料で風俗サービスを提供する
  • 引きかえに行為を撮影する
  • 映像はネットで有料で公開する

これが、サービス提供者、サービス需要者、ネット会員という三種類のアクターを一つのプラットフォームで結びつけるビジネスであるのが分かる。

誰が誰にお金を払うかは、ネットワーク効果がどのように発生するかによって決まる。サービス提供者は多い方がよいので企業は賃金を支払う。閲覧者は少ない方がいいので料金を徴収する。需要者は特殊で、売春が法律で禁止されているため無料となる。需要者は撮影に必要だが簡単に見つかるので経済的にもそれほど間違った価格(=0)ではない。

このビジネスモデル自体は古典的な覗き部屋と同じだがインターネットがそのスケールを飛躍的に拡大させた。こういったニッチは市場は通常大都市でしか成り立たないが、インターネットがあれば多くの顧客を同時に相手にできる。また低コストな地域で営業して高所得な地域で収益をあげることも可能だ。これにより、映像からの利益が上がったことでサービス自体の価格をゼロにできれば、売春に関する規制も同時に回避できる(基本的にその場での金銭のやりとりさえなければ売春には該当しない以上取り締まりは不可能だろう)。