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アメリカの地域別世帯収入

アメリカの地域別(county)の世帯収入の中間値があった:

Many Eyes: Income and Poverty, by County via Economix

BerkeleyのあるAlameda Countyでは$70,217となっている。Economixの記事によれば貧困が最も多いのがサウス・ダコタのZiebachで$25,592である。最も高そうなのはバージニアのLoudonで$111,582だ。もちろん地域内での格差のほうが大きいのでこれを一般化して何かを主張するのは難しいが、日本に比べると大きな差のように思える。

ちなみに平成18年度東京都福祉保健基礎調査によると東京都の世帯所得分布は以下の通りだ:

tokyo

500万円以下ので50.9%を占めているので中間値は500万円弱といったところだろう。

人種・年齢・学歴別失業率

タイトル通り、デモグラフィー別で失業率の時系列をフラッシュで比べられる:

The Jobless Rate for People Like You – Interactive Graphic – NYTimes.com

いくつかの観察:

  • 全体では8.6%
  • 男性全体では9.5%、女性全体では7.6%で全体的に男性の方が失業率が高い(これは仕事がなくても求職を続けるためだろう)
  • 高校中退(以下)では17.5%、高卒では9.1%、大卒以上で4.5%
  • 人種では白人7.2%、黒人13.9%、ヒスパニック11.3%、その他8.2%
  • 15-24歳で16.7%、25-44歳で8.2%、45歳以上で6.3%
  • 一番低いのは25-44歳の大卒白人男性で3.9%
  • 一番高いのは15-24歳の高校中退黒人男性で48.5%

人種の区分けがAll races, White, Black, Hispanic, All other racesしかないのでアジア系の情報ここではわからない。細かい数字は労働省の統計局にある。

しかし、日本の新聞社のウェブサイトとの格差があまりにも酷い。日本ももうちょっとどうにかしてほしいものだ。

ネットワーク中立性vs価格差別

ネットワーク中立性がない世界ならISPのプランはどうなるかという思考実験がPacket Lifeから:

Why network neutrality is a big deal – Packet Life

without_net_neutrality

この図は、ネットワーク中立性の議論がミクロ経済学の教科書にある第二種価格差別(second-degree price discrimination)を規制すべきか否かという問題であることを示している。

例えば、二種類の潜在的顧客がいるとする。顧客Aはインターネットでショッピングをしたいのに対し、顧客Bはショッピングするつもりはないとしよう。Aは$40払うつもりがあり、Bは$20しか払うつもりがない。Bの顧客の割合がAにくらべ極端に少なくない限り、全員に$20課金するのが最も大きな利益になる。

ネット上でのショッピングには暗号化通信が必要だ。ISPは例えばこのことを利用して二種類の顧客に別々の料金を支払わせる(第二種価格差別)ことができる。誰がAで誰がBかを知っている必要はない。単に暗号化プロトコル(https)をブロックするプランを$20、ブロックしないプロトコルを$40で提供すればよい。Aは後者を選択肢、Bは前者を選択するためISPは利益を劇的に増やすことができる。

しかしこの様なことは実際には起こっていない。なぜならこの様な価格差別はISP間で競争が存在する場合には導入するのが困難だからだ。上の例でいえば競争相手はAに$40よりも安い価格を提供すればよい。競争の度合いにもよるが日本のようにISP間の競争が激しい場合にはまず無理だろう。これがネットワーク中立性問題がアメリカでだけ取り沙汰される理由である。

だがネットワーク中立性が必ずしも望ましいわけでないことには注意が必要だ。例えばある街ではAとBがともに1000人存在するとしよう。この街全体ではインターネットに対して最大[latex]\$ 40 \times 1000 + \$ 20 \times 1000=\$ 60,000[/latex]支払ってもよい=それだけの価値を認めていることになる。しかしネットワーク中立性が義務付けられていた場合、ISPの最大収入は[latex]\$ 20\times 2000=\$ 40,000[/latex]にしかならず、接続を提供するための費用が$40,000を越えているが$60,000を下回っている場合には社会的に望ましい投資が行われないことになる。

もちろんISPにとっては価格差別が行えることはプラスなので、常に上記のような問題が存在すると主張するだろうからどちらが望ましいかについての判断は慎重に行わなければならない。判断に必要な費用についての情報をISP側が持っていることにも注意する必要がある。

移民と送金規模

国際的な移民と送金の規模についてわかりやすいビデオがThe Economistにあがっている:

主な情報は次の通りだ:

  • 地域間の移動より地域内での移動が多い
  • 送金は高所得の国から中所得の国へのものが多い
  • 移住のコストは大きく、経済の発展に伴い移民が増える
  • 低所得の国から移民と自国へ送金は小規模に留まっている

OECD諸国のジニ係数と相対貧困率

相対貧困率で検索してくる人がいるので追補でも。

OECD諸国の相対貧困率とジニ係数についてはWikipediaにも掲載されている(一次文献はOECD Social, Employment and Migration Working Paper No. 22 Selection of figures from OECD Questionnaire on Income Distribution and Poverty)。

以下がそれを棒グラフにしたものだ:

inequality

せっかく入力したのでGnumericのデータcsvファイルも置いておく。

相対貧困率であれジニ係数であれ一つの統計を計算して所得分配を表すという主張に無理がある。比べるなら所得の分布をヒストグラムなどで示すほうがわかりやすい。また前回述べたように、所得分配を全人口(ないし全世帯)について見ると、年齢・経験による所得の増大と個人・世帯間の格差の区別がつかない。世代毎に所得分配を示した上で所得階層間の移動の度合いを説明する必要がある。

また個人・世帯ごとの所得は国内での物価の差で調整されていないだろう。例えばニューヨークやサンフランシスコは非常に物価・家賃が高いので同じ給料ではまともに暮らせない。国内に特別に物価の高い地域があれば名目所得の分布はより不平等に見える。通常の財であれば裁定取引により価格が国内で劇的に異なることはないだろうが、土地やサービスではそうはいかない。

P.S. これぐらい新聞社なんなりがやるべきだろう。またアメリカ在住者からすると、アメリカと日本との間に大きな差のでない不平等さの指数に意味があるとは思えない。

追記:物価調整(PPP)については前回のポストへのコメントWillyさんからご指摘があったことに気づきました。感謝。

追記:さらに言えば高齢化が進むとこの手の指数はどれも悪化する。年齢が上がるにつれ所得に差がつくからだ。

国名  ↓ ジニ係数  ↓ 相対貧困率  ↓
AUS オーストラリア 30.5 11.2
AUT オーストリア 25.19 9.29
BEL ベルギー 27.16 7.76
CAN カナダ 30.09 10.34
CZE チェコ 25.96 4.25
DEN デンマーク 22.48 4.32
FIN フィンランド 26.1 6.36
FRA フランス 27.3 7.04
GER ドイツ 27.75 8.89
GRC ギリシャ 34.47 8.89
HUN ハンガリー 29.34 8.2
IRL アイルランド 30.37 15.4
ITA イタリア 34.71 12.9
JPN 日本 31.38 15.25
LUX ルクセンブルク 26.06 5.46
MEX メキシコ 47.97 20.26
NLD オランダ 25.06 6
NOR ノルウェー 26.1 6.33
NZL ニュージーランド 33.67 10.4
POL ポーランド 36.74 9.85
POR ポルトガル 35.61 13.67
SPA スペイン 32.91 12.1
SWE スウェーデン 24.28 5.25
SWI スイス 26.66 6.74
TUR トルコ 43.91 15.88
UKG 英国 32.56 11.42
USA 米国 35.67 17.09