職業別の政治的傾向

職業ごとに、リベラル・保守のスペクトラムでどの辺になるのかが図になっていて面白い。

Ideological rankings of occupational categories

政治献金をする人の職業のデータから各職業のメジアンでの政治的な立ち位置が示されている。青と赤の分布は民主党と共和党の議員のものだ。拡大すると読めるが、最もリベラルなのはMontion PicturesでそれにProfessors, Printing and Publishing, Public Schools, Laywersなどが続く。逆に保守的なのはOil and Gas, Auto dealers, Construction, Energy Production, Agricultureなどとなっている。思想的な左右と経済的な左右とを分離できない一次元的な表現の限界は感じるものの面白いデータだ。

数値の計算については他のポストで説明されている。簡単に説明すると、まず民主党の立候補者の数値を[latex]-1[/latex]、共和党の立候補者の数値を[latex]1[/latex]とする。次に献金者の数値を献金相手の数値の献金額での加重平均として計算する。そして今度は逆に各候補者の数値を献金者の数値をそれぞれの献金額の加重平均にアップデートする。数値が収束するまでこれを繰り返すと各候補者及び献金者の数字が決まるという寸法だ。この方法は、議員の数値を議会での投票行動から計算する方法に比べて、落選した立候補者への献金も考慮できる点で優れている。

起業家ビザ

逆頭脳流出」では、アメリカが外国から優秀な人材を惹きつける力が落ちているのではないかという懸念されていたが、その例が記事になっている。

Silicon Valley is losing foreign-born talent

Silicon Valley may be the cradle for tech start-ups, but some foreign-born executives, engineers and scientists are leaving because of better opportunities back home, strict immigration laws here and the dreary California economy with its high cost of living.

四つの原因が指摘されている:

  1. 祖国での機会が増えている
  2. 移民政策が厳しい
  3. カリフォルニアの経済が良くない
  4. 生活費が高い

1に関してはアメリカが出来ることはないし、4は都市が発展すれば自動的に起きることだ。それに対し、2,3は改善の余地がある。カリフォルニアが特別に調子が悪いのには莫大な財政赤字があり、これは新しい政策を始めるのが簡単なのに税金を導入するのが難しい制度に一端がある。また、アメリカの移民政策は実はかなり制限的だ。最も一般的な労働ビザは雇用主がスポンサーになるため、労働者にとっては雇用主への交渉力がなくなり非常に不利だ。

Foreign-born students earned 16.6% of the total degrees awarded in science and engineering programs from local colleges and universities in 2007, compared with 18.4% in 2003, the study says.

こういった状況の中、外国人の学位取得者も減少中という(これが統計的に有意なのか分からないが)。

“For the first time, immigrants have better opportunities outside the U.S.” Often, a lack of work visas blocks foreign talent from staying.

これが上に述べたビザの問題だ。アメリカは移民が過ごしやすい文化を持っているが、法的な面では永住権を取得するまでの(通常)六年間、悪く言えばこき使われる可能性が高い。だから母国の経済が発展していれば敢えて残ろうとはしないのは自然だ。

Feld’s organization has helped shape the StartUp Visa Act of 2010, introduced last month by Sens. John Kerry, D-Mass., and Richard Lugar, R-Ind. It would grant immigrant entrepreneurs a two-year visa if they have the support of a qualified U.S. investor for their start-up venture.

この問題に対して、現在起業家用のビザ制度を用意する動きが進んでいる。アメリカの投資家から投資を受けたベンチャー企業経営者をサポートするものだ。一体何がベンチャー投資と言えるのかが曖昧という問題はあるが、現状でもEB5などを使えば実質的にビザを買うこともできるわけで正確な定義を議論することに意味はないだろう。

食べ過ぎ大国

アメリカ人の肥満具合はよくネタにされるが、一体どのくらい食べているのか。データがあったのでちょっと覗いてみよう。

ERS/USDA Data – Food Availability (Per Capita) Data System

As with the basic food availability data, the Loss-Adjusted Food Availability Data series does not measure actual consumption or the quantities ingested.

農務省のEconomic Research Serviceから公表されている情報だ。普通の栄養学的な情報とちょっと違うのは、このデータは実際の食事に関するデータに全く基づいていないところだ。

They are calculated by adding total annual production, imports, and beginning stocks of a particular commodity and then subtracting exports, ending stocks, and nonfood uses.

このデータは食糧の生産量・輸入量・期首の在庫から輸出量・期末の在庫・非食用利用を引いて計算されている。そこから実際に消費者の口に入るまでに生じるロスを推定して一人当たりの摂取カロリーを作るわけだ。そのため地域別データもないし、男女別の数字すらない(よって例えば南部の州の男性だけ取り出せばこれよりも遥かに多い数字になるはずだ)。

そこから七種類の分類別にカロリー摂取量の推移をグラフにしたものが上だ。最新の2008年で平均摂取カロリーは2,674Kcalとなっている。これは2002年のピーク時における2730Kcalよりは低いが、四十年前に比べると30%の増加だ。推定ロス率を掛ける前の消費量は約3,900Kcalとなっている。

国会図書館のページによると、日本の平均消費カロリーは厚生労働省調べで1,891Kcalとされていてアメリカよりも1,000Kcal近く少ない。

『World health databook 2007/2008』の「Japan: Nutrition and obesity 1999-2006」のデータソースは“Source: WHO/OECD/Euromonitor International”となっていますが、食い違いの原因は不明です。

ちなみに上記ページではWHOによる日本の摂取カロリー2875.3Kcalと厚生労働省の数字との食い違いが指摘されているが、これはロスを計算に入れているかどうかの違いだろう。おそらくWHOの数字は単純な食糧消費(経済から消えた食糧量)から計算しているのに対して、厚生労働省の数字は実際に口に入れたカロリー量を計算していると思われる。

リトアニアでの青少年保護

ゲイマリッジに関する記事だが、非実在青少年などという概念が真面目に議論されている日本にとっても興味深い内容だ。

Lithuania | Gay Rights | Gay Marriage | EU

The “Law on the Protection of Minors against the Detrimental Effect of Public Information” came into force on March 1 and restricts any public dissemination of information which affects the “mental health, physical, intellectual or moral development” of children under 18.

今月、有害情報から未成年を守るための法律が施行されたそうだ。その内容は青少年のメンタルヘルスから身体的・知的・倫理的な成長に影響する情報の頒布を制限するものだという。具体的な例は次のようなものだ:

  • 悪い食習慣や衛生週間、運動不足を助長するもの
  • マスメディアの視聴者を対象とした集団催眠を描くもの
  • 財産へのダメージ・破壊を助長するもの
  • 性的なもの
  • 恐怖を煽るもの
  • ギャンブルを助長するもの
  • 家族の価値を貶め、憲法や民法に規定されている以外の結婚観・家族観を提示するもの

問題となっているのは最後の結婚・家族に関するものでこれは、セクシャルオリエンテーションに基づく差別を禁止するEUの規定に反すると非難されている。

上に挙げられた内容はいずれも多くの人が有害かもしれないと思う情報だ。しかしある情報が有害かもしれないから制限すべきという考えを受け入れればそれがこのように無制限に拡大することは現実的にありうるということを示している。

電子書籍統一規格

電子書籍に関する懇親会が開かれたそうだ:

電子書籍に統一規格、流通や著作権を官民で整備

政府は17日、本や雑誌をデジタル化した電子書籍の普及に向けた環境整備に着手した。[…]国が関与して国内ルールを整えることで、中小の 出版業者の保護を図る狙いがある。

しかし規格統一の狙いが中小の出版業者というのはどういうことだろう。

電子書籍の形式は各メーカーが定めており、共通のルール、規格がない。端末ごとに読める書籍が限定されるほか、「資本力で勝るメーカーに規格決定の主導権を握られると、出版関連業界は中抜きにされる恐れがある」(総務省幹部)との指摘がある。

日本だけでしか流通しない独自規格を官民で整備したとして、それが誰にメリットになるのだろう。Amazon, Apple, Googleなど先進的な企業が競争した結果生き残る規格に日本発の規格が競争できる訳はないので、国外展開は絶望的だ。当然、電子書籍の流通やリーダーなどに関しても取り残されるだろう。消費者にとっても海外で使われている優れた規格が日本では利用できないという結果になりはしないだろうか。

また、テクノロジーが進歩したときに流通の一部が「中抜き」されるのは当然のことだ。出版の場合だけ政府が心配するのは何故だろう。

ちなみに懇親会のメンバーは総務省で公開されている。現職以外のプロフィールぐらい載せて欲しいと思うが、生まれ年だけ簡単に調べてみた(Googleで検索してすぐに見える情報で正確性は保障できないので間違いがあればご指摘下さい)。

  • 安達俊雄 シャープ株式会社代表取締役副社長:1948年
  • 足立 直樹 凸版印刷株式会社代表取締役社長:1935年
  • 阿刀田 高 作家・社団法人日本ペンクラブ会長:1935年
  • 内山 斉 社団法人日本新聞協会会長・株式会社読売新聞グループ本社代表取締役社長:1935年
  • 相賀昌宏 社団法人日本雑誌協会副理事長・株式会社小学館代表取締役社長:1951年
  • 大橋信夫 日本書店商業組合連合会代表理事・株式会社東京堂書店代表取締役:1943年
  • 小城武彦 丸善株式会社代表取締役社長:1961年
  • 金原優 社団法人日本書籍出版協会副理事長・株式会社医学書院代表取締役社長:調査中
  • 北島義俊 大日本印刷株式会社代表取締役社長:1933年
  • 喜多埜裕明 ヤフー株式会社取締役最高執行責任者:1962年
  • 佐藤隆信 社団法人日本書籍出版協会デジタル化対応特別委員会委員長・株式会社新潮社取締役社長:1942年
  • 里中満智子 マンガ家・デジタルマンガ協会副会長:1948年
  • 渋谷達紀 早稲田大学法学部教授:不明・一度大学から退職されています
  • 末松安晴 東京工業大学名誉教授・国立情報学研究所顧問:1932年
  • 杉本重雄 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授:不明・1977年に大学卒業
  • 鈴木正俊 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ代表取締役副社長:1951年
  • 高井昌史 株式会社紀伊國屋書店代表取締役社長:1947年
  • 高橋誠 KDDI株式会社取締役執行役員常務 コンシューマ商品統括本部長:1961年
  • 徳田英幸 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長兼環境情報学部教授:1952年
  • 長尾真 国立国会図書館長:1936年
  • 楡周平 作家・社団法人日本推理作家協会常任理事:1957年
  • 野口不二夫 米国法人ソニーエレクトロ二クス上級副社長:不明・1982年ソニー入社
  • 野間省伸 株式会社講談社副社長:1937年
  • 三田誠広 作家・社団法人日本文藝家協会副理事長:1948年
  • 村上憲郎 グーグル株式会社名誉会長:1947年
  • 山口政廣 社団法人日本印刷産業連合会会長・共同印刷株式会社取締役会:1937年

生まれ年から類推するに70歳以上が7人、60-70歳が7人、50-60歳が4人、40-50歳が3人となっている(3人は不明だが50代、60代、70代一人ずつといったところか)。

年齢が高いことが一概に悪いとは言わないが、電子書籍という新しいメディアを論じるに当たってもう少し若い世代の意見を取り入れることはできないのだろうか。50歳以下だと産業再生機構から丸紅社長に就任した小城武彦氏、ヤフーの喜多埜裕明氏、KDDIの高橋誠氏となっている。

ネットの利用に関しては喜多埜氏と高橋氏の二人についてTwitterのアカウントが確認できた(@kitano123@makjob)。あとは三田誠広がかなり古風な個人サイトを運営されている。しかしこれらも例外であり、参加者のテクノロジーの利用は進んでいないと見るべきだろう。。

業種別では、大学4、作家4、出版4、書店3、印刷3、ネット2、メーカー2、通信2、図書館1となっている(これに省庁関係者が加わる)。既存の出版の仕組みから利益を得ていると考えられる作家・出版・書店・印刷が14に対して、電子書籍を推進するであろうネット・メーカー・通信は6しかいない(作家は本来ニュートラルと考えられるが参加者はどなたも既に業界団体の上に立つ立場であるからして、既存の仕組みを支持していると考えるのが妥当だろう)。言うまでもなく経済学関係の人は見当たらない。

「中小の 出版業者の保護を図る狙い」とある割には中小出版業者の代表は少なく、むしろ大手出版社関係者が多い。金原氏が社長をつとめる医学書院が中小出版業と言えるが(訂正:年齢が違っている模様です)、医学書院の出版物の価格を考えると保護を図るという主張は消費者にとって受け入れがたいのではないだろうか

最後に、シャープの安達俊雄氏および丸紅の小城武彦氏は旧通商産業省出身だ。経済産業省が関わる懇親会なのだからこういった情報は公開するのが筋だろう

追記:金原氏の情報が違っているという情報を頂いたので注記しました。