人間の脂肪マーケット

あまり経済とは関係ないけど:

Peru’s Police Say Gang Drained Victims’ Fat – NYTimes.com

A gang in the remote Peruvian jungle has been killing people for their fat, the police said Thursday, accusing the gang’s members of draining fat from bodies and selling it on the black market for use in cosmetics.

ペルーのジャングルで、死体から脂肪を採取して闇市場で売るために人を殺していたギャングが逮捕されたそうだ。

Three suspects have confessed to killing five people for their fat, said Col. Jorge Mejía, chief of Peru’s anti-kidnapping police. He said the suspects, two of whom were arrested carrying bottles of liquid fat, told the police it was worth $60,000 a gallon.

恒常化しているようで、1ガロン(3.79リットル)で六万ドルで売れると供述している。

Mr. Castillejos told the police that the band’s fugitive leader, Hilario Cudena, had been killing people to extract fat for more than three decades.

ギャングのリーダーに至っては30年間にも渡り続けているようだ。

Several medical experts acknowledged that fat had cosmetic uses, but they also said they doubted that there was an international black market for human fat. Dr. Lisa M. Donofrio, a Yale University dermatology professor, speculated that a small market might exist for “human fat extracts” to keep skin supple, though she added that scientists considered such treatments “pure baloney.”

国際的な闇市場はないだろうが小さな市場ならあるかもしれない。漢方にするために絶滅危惧種が乱獲されるのと似たようなものだろう。

具体的な方法を知りたい方は以下の節に:

gang would cut off its victims’ heads, arms and legs, remove the organs, and then suspend the torsos from hooks above candles that warmed the flesh as the fat dripped into tubs below.

環境に対する態度と行動

環境に対する人々の態度が実際の行動に結びつかない問題について:

How Understanding the Human Mind Might Save the World From CO2 – NYTimes.com

A newspaper advertisement recruited 40 participants on a first-come-first-served basis, and the workshop lasted three hours. Before and after the workshop, subjects took surveys measuring how much they knew and cared about energy efficiency. The change was significant — participants significantly knew and cared more about the issues after the workshop than before.

人を雇って三時間の節電ワークショップに参加してもらい、その後アンケートをとったところ、参加者は節電に詳しくなり注意を払うと分かったそうだ。

But when the researchers looked at the actual actions that people took afterward, the results were discouraging.

ところが、実際の参加者の節電への行動はあまり変わらなかった。

The example illustrates a basic principle in social psychology: that people’s attitudes do not translate into action.

このように人々の態度が行動に結びつかないことはは社会心理学では基本的な原理だそうだ。

これはエコノミストにとっては当たり前のはなしだ(参考:客は嘘をつく誰がオンラインニュースにお金を払うか)。人間はインセンティブに応じて行動する。アンケートにどう答えるかとは関係ない。

Barriers include not knowing what actions to take, not understanding the benefits or having mistaken information — for example, research has shown that the top reason parents do not want their kids to bike or walk to school is because they fear abductions, even though the number of abductions per year in Canada is often in the single digits, McKenzie-Mohr said.

どんな行動を取るべきかについての情報が足りないということが態度と行動が結びつかない理由の一つとして挙げられている。

経済学的原理に基づいた環境対策はこの点でも有効だ。例えば炭素税をかけることは二酸化炭素を発生させるような製品・サービスの価格をその寄与に応じて上昇させる。消費者はどんな商品が環境にやさしいかを考える必要はない。単に価格にだけ注意すればよい。価格は極めて効率的な情報伝達メカニズムなのだ

子どものDNA鑑定

父親が子どもの生物学上の親である割合についてのニュースがあったが(参考:DNA鑑定と親子関係)、関連ニュース:

How DNA Testing Is Changing Fatherhood – NYTimes.com

DNA鑑定で生物学上の親ではないと分かった父親のストーリーがいくつか挙げられている。基本的流れは次のような感じだ:

  1. 子どもがそれなりに育ってから何らかの機会(浮気の発覚、養育費の割増要求)などで疑念を抱く
  2. DNA鑑定で遺伝的なつながりがないことが発覚
  3. 婚姻中であれば離婚
  4. (A)完全に親子関係を絶つ、(B)親子関係を維持する=養育費を払う
  5. 元妻が子どもの生物学上の父親と再婚ないし同棲
  6. (B) なら元夫が親子関係の不存在を求めて訴訟して負ける

問題は6だ。4で親子関係を維持している場合(B)、法律上の父親は元夫であるため養育権(custody)がなくとも養育費(child support)を支払う義務が生じる。この場合元夫は生物学上の家族へ養育費を支払うという非常に不自然な形になる。

そもそも(B)を選択しているのは何故か。それは養育費を支払う義務を免れるには遺伝上のつながりがないと判明した時点で親子関係を完全に解消しなければ(A)ならないからだ。そこまで踏みきれない男性が多い。

このような複雑な制度が作られているのは、子どもと親との利害関係を調整するためだ。親子関係を解消するのであれば早い方が子どもにとって望ましいという理由から(A)を選択しない限り法律上の親子関係は固定される。

Several suggested that DNA paternity tests should be routine at birth, or at least before every paternity acknowledgment is signed and every default order entered.

この問題を簡単に解決する方法はDNA鑑定を義務付けることだ。DNA鑑定のコストは下がっており、法律で導入を進めればさらに安価になるのは間違いない。

Mandatory DNA testing for everyone would be a radical, not to mention costly, shift in policy. Some advocates propose a somewhat more practical solution: that men who waive the DNA test at a child’s birth should be informed quite clearly that refusing the test will prohibit them from challenging paternity later.

鑑定のための費用を削減するために、義務付けるのではなく、鑑定を行わなかった場合には後で親子関係の不存在を訴えることを認めないという案もある。しかし、子どもとの生物学的つながりに自信を持つ父親でさえ2%は実際にはつながりがないという調査結果を考えれば、それなりに裕福な国では義務付けも止むないだろう。後で問題が発覚した場合の被害は父親・子ども両者ともに甚大だ。いくら法律で親子関係を義務付けても、発覚してしまえば被害は避けられない。

鑑定によって遺伝的つながりがないと判定された場合の子どもの扶養を問題にする指摘もあるが、遺伝上の父親を同様の鑑定によって発見するのは容易い。また片親の家庭はこういったケースに限られるわけではなく、通常の福祉政策によってカバーできる。

P.S. しかし女性が子どもが男性のものだと欺いているわけだから単なる詐欺として処理すればうまく回るような気がするんだけど。。。子どもは善意の第三者ってことでいいし。

フィルターとしての人間

ニュース・アグリゲーターのTechmemeがスタッフを三人増やして倍増させたというニュース:

Techmeme Doubles Down On Its Staff

When Rivera announced the addition of a human editor last year, it caused some controversy. Many people believed that only using a set of algorithms for surfacing news was better because it would take out much of the bias that a human might introduce to the system. But Rivera believes this curation is an integral part of the process to help with fast breaking news and to better filter out spam and old news being re-reported.

アグリゲーションをDiggのようにユーザーインプットで行ったり、Google Newsのようにアルゴリズムで行うのは今や当然のことだが、そこに人間を加えるというのは非常によいアイデアだ。

デジタル化は情報を流通させるための費用を減らし、流通で成立してきた旧来のメディア産業を衰退させている。前にも述べたように、産業が効率化すると従事する人間は減る。

しかし、情報量の増大はフィルタリングの必要性を意味する。そして、コンピュータは人間が必要とする情報を見つけ出すことがそれほど得意ではない

これは、メディア産業の中での人間の移動につながる。コンテンツを生産・流通させる側から、そうして出回る情報を選別する側に人が移っていく。検索エンジンもソーシャル・ブックマークもその一部だ。

調査報道の行方

調査報道(investigative journalism)が非営利団体に及ぼす影響:

Carnegie Reporter, Vol. 6, No. 1 | Why Nonprofits Need Newspapers via Nieman Journalism Lab

Nonprofits have been increasingly sensitive to the watchful eyes of newspapers analyzing their budgets, compensation policies, potential conflicts of interest and governance practices. While difficult to measure, these watchdog efforts have made a real difference in preventing undesirable practices and causing institutional changes in behavior.

メディアの存在は非営利団体に規律を与える。これは非営利団体が抱えている最大の問題に対する一つの答えだ。以前、非営利団体の経済学については「非営利と営利との違い」で説明した。

非営利団体とは、残余請求者が存在することが事業の推進に支障をきたすような組織だ。典型的な例は寄付によって成り立 つ途上国支援団体だ。これを営利形態で行うことも原理的には可能だ。単に人を雇って寄付を募り、それを支援に使い、寄付者に報告すればいい。しかしこのビ ジネスはうまくいかない。何故ならば寄付をした人々=顧客は支援が適切に実行されたかを確認する手段を持たないからだ。支援額を減らせば簡単に利益を上げ られる。

非営利団体とは、組織が挙げた利益に対する最終的な権利者が存在しない組織だ。そしてそういう形態を取る主な理由は「寄付をした人々=顧客は支援が適切に実行されたかを確認する手段を持たない」ことだ。

残余請求者がいないということは企業が会計上の利益を上げたとしてもそれを組織の外に出すことができないということだ。よって留保金はいつか定款の定める事業目的に使われるし、そもそも過剰に留保を出すインセンティブがない。よって非営利団体は同じ事業を行う営利団体よりも多くの顧客=寄付を集め、よりよく目的を達成できる。

利益を手にできる人間が存在しないことが、寄付された資金が組織の目的どおりに使われることを担保し、寄付を促す。

しかしこれれは最低限の保証に過ぎない。例え利益が会計上留保されようと、高額の給与や過度の福利厚生で外部に流されることはありうる。

利益を上げてもそれを受け取れる人間が存在しないということは、事業を効率的に推進するもっとも簡単なインセンティブを持つ人間が組織に存在しないということだ。

また、利益を自分の手にできない以上、効率化のインセンティブは低い。

調査報道はこういった点を暴露することにより非営利団体の助けになりうる

The decline in daily newspapers and the reduction in newsroom staff, especially investigative reporters, is a worrisome development.

しかし、新聞業界の縮小により調査報道に携わる人間の数は減っていっている。現在の新聞業界のありかたには問題があるし、デジタル時代に紙の新聞が現象するのは自然なことだ。しかし、現状の新聞社が必要ないことと、新聞が担ってきた役割が必要ないこととは別のことだ

ある不正を調査するには費用がかかり、それが回収できる見込みがなければ報道は行われない。数が減れば回収できるようになるはずという意見もあるだろうが、報道が寡占化すればそもそも調査報道を行うインセンティブが減るだろう(日本の大手新聞社を見れば分かる)。

非営利団体の数は増えてるばかりだ。新聞社が衰退していくのを歓迎するだけではなく、社会的に必要な報道が行われるようなスキームを社会として考えて始める時期に来ている。