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好きな事について書く

参照先の主旨とは関係ないが、次の一節が印象に残った。

Productivity is about finding space | Penelope Trunk’s Brazen Careerist

(珍しく)全訳してみよう:

I remember when I taught creative writing to freshmen at Boston University. The first month almost every student wrote about sex. I went to my advisor and asked him why I am getting twenty stories about having sex.

ボストン大学で一年生に作文のクラスを教えた時のことを覚えている。最初の月はほとんど全員がセックスについて書いた。指導教官に、どうしてセックスについて20本も作文が提出されているのか聞いてみた。

He said, “Are all the stories terrible?”

教授は「その作文はひどい出来かい」と尋ねた。

I said, “Yes.”

「その通りです」と答えた。

He said, “That happens every semester. When you love something, you want to write about it. But you never know enough about it to write it in an interesting way until you know it closely enough to hate it as well.”

彼曰く、「これは毎学期の事だよ。何かをとても好きになるとそれについて書きたくなる。でも、それについて面白く書ける程にそのことをよく理解するようになったころには好きばっかりではいられなくなってるんだよ。」
非常に説得力がある。あることについて知れば知るほど、興奮は冷めて行くし、得られる追加的知識も減っていく。論評するためには長所短所も知らなければならない。あることを絶賛しているだけの人間の話なんて誰も聞きたくはないだろう。

これは「好きなことを仕事にするな」の話にも繋がる。お金を取れる程に何かに習熟したころには、それをやっているだけで幸せとはいかないことが多いのは自然なことだ。上の例に戻れば、セックスについて読ませる文章を書く人やセックスでお金を稼ぐ人がそれをどれだけ好きかということだ。

花火の規制緩和

ノーベル賞を取った人が教育について語るというのはよくある話だがこれはなかなか興味深い。

Nobel laureate: If you want to get kids interested in science, legalize fireworks

When I asked Sir Richard at lunch what we could do to spark more interest in science among young people, I was surprised by his answer: make it easier for them get their hands on fireworks.

RNAスプライシングでノーベル賞を受賞したSir Richard Robertsは、若い人にもっと科学への興味を持ってもらうためには花火に触れさせるのがいいという。

“When I talk to my Nobel colleagues,” he said during the on-stage portion of our conversation, “more than half of them got interested in science via fireworks.”

他の受賞者に話ても多くの人が花火を通じて科学へ興味を抱いたとのこと。

Blowing stuff up, apparently, generates excitement about chemistry in a way that staring at the periodic table of the elements just doesn’t.

確かに花火は見た目も派手だし、含まれる元素によって色が変わるので科学を学ぶのには最適だ。Wikipediaにも花火に利用される元素とその用途が記されていて面白い。ちなみに日本では火薬類取締法で規制されている。危ないものを規制することは必要だが、子供が科学に触れる機会を用意することも必要かもしれない。

卒後三年は新卒

斜め上の発想が見事な日本学術会議より。

卒業後3年は新卒扱いに 大学生の就職、学術会議提案 – 社会

大学生の就職のあり方について議論している日本学術会議の分科会は、新卒でなければ正社員になりにくい現状に「卒業後、最低3年間は(企業の)門戸が開かれるべきだ」とする報告書案をまとめた。

新卒でなければ正社員になりにくい現状は問題からどうして三年間という数字が出てきたのだろう。三年以上たったらどうするのだろう。

企業側にも新卒要件の緩和を求め、経済団体の倫理指針や法律で規制するより、既卒者を新卒者と同じ枠で採用対象とする企業を公表することを提案。

具体的には、既卒者を新卒者と同じ枠で採用すべきだという(驚)。新卒者の特別扱いをやめて、新卒三年以内を特別扱いしようという案のようだ。この案が実行されて一番困るのはその年の新卒者のように思えるのがどうだろう。既卒者との競争にさらされるだけでなく、「新卒枠」を減らす企業も出てくるだろう。

新卒至上主義を解決するのに新卒概念を拡大してもしょうがない。正社員になりにくいからといってみんな正社員にしろといっても(国有企業でもなければ)問題は解決しないのと同じだ。既卒者・転職者が不利というのは結果であって原因ではないのだから、一見誰も痛まない策をでっち上げたところでしょうがない。

Intel STS

トーマス・フリードマンの移民推進を謳うOp-Ed。

Op-Ed Columnist – America’s Real Dream Team – NYTimes.com

Intel Science Talent SearchはもともとWestinghouseがスポンサーしていたイベントだったが、1998年からはIntelがスポンサーとなりその名を冠するようになった。毎年40人のファイナリストが選ばれ、最大$100,000の奨学金が授与される。過去に複数のノーベル賞・フィールズ賞受賞者を輩出している。

フリードマンは今年のファイナリストの大半の名前をリストアップしている。それが以下だ:

Linda Zhou, Alice Wei Zhao, Lori Ying, Angela Yu-Yun Yeung, Lynnelle Lin Ye, Kevin Young Xu, Benjamin Chang Sun, Jane Yoonhae Suh, Katheryn Cheng Shi, Sunanda Sharma, Sarine Gayaneh Shahmirian, Arjun Ranganath Puranik, Raman Venkat Nelakant, Akhil Mathew, Paul Masih Das, David Chienyun Liu, Elisa Bisi Lin, Yifan Li, Lanair Amaad Lett, Ruoyi Jiang, Otana Agape Jakpor, Peter Danming Hu, Yale Wang Fan, Yuval Yaacov Calev, Levent Alpoge, John Vincenzo Capodilupo and Namrata Anand.

なんだ、外国人ばかりかというと全くそういうことはない。

O.K. All these kids are American high school students. […] The awards dinner was Tuesday, and, as you can see from the above list, most finalists hailed from immigrant families, largely from Asia.

全員がアメリカの高校生で、主にアジアから移民の子供達だ。

Because when you mix all of these energetic, high-aspiring people with a democratic system and free markets, magic happens.

移民が必要な本当の理由」で書いたのと基本的に同じことだ。やる気に溢れた人々を適切なシステム=民主的な政治と自由市場と組み合わせることで凄い結果が生まれる。

Today, just about everything is becoming a commodity, except imagination, except the ability to spark new ideas.

その根底にあるのは、コモディティ化で新しいアイデアを生み出す能力だけが重要になっていると言う。そしてそういった能力を持つ人材を集める有効な方法がこういったコンテストであり、適切な移民の受け入れだ。

コモディティ化を免れているもう一つの要素はネットワークだろうが、このような催しは優秀な人材がお互いを知り合う機会も同時に生む。日本でも同じような試みは行われていないのだろうか。

ウェブ入社試験

ウェブ入社試験の替え玉受験が問題になているそうだ。

正直者はバカ!? ウェブ入社試験に“替え玉受験”横行

人気企業の多くが1次試験で実施する就職テス トで、「替え玉受験」が行われているというのだ。ネット受験をこれ幸いに、別人に問題を解かせて高得点をゲットしているという。

企業が応募者にオンラインの試験を実施しているそうだ。これに替え玉受験が発生するのは誰だって分かるだろう。個人情報が漏れるとマズイためマーケットが存在しないだけで、一方的に替え玉受験を行うサービスがあっても不思議ではない(というかないほうが不思議だ)。

この声に対し、実際にウェブテストを行っている大手メーカーの担当者は「会場を借りて一斉に行う従来の入社試験に比べて、ウェブテストは大変なコスト削減 になる。いまさら会場型には戻せません。替え玉受験があることは織り込み済み。その後の数回にわたる面接で、ダメな学生は必ず淘汰されます」と語る。

当然、企業はこんなことは分かっているわけで、コスト削減が目的だ。替え玉を用意できるのも「社会人」としては重要な能力なのもあるだろう。

しかし不思議なのは、明らかに不正確なことが分かっているウェブテストではなく、大学の成績を利用しないのかということだ。もちろん大学でも替え玉受験はあるだろうが、多くのクラスで替え玉するのはある一回のウェブテストで替え玉するのに比べて遥かに難しい。

どんな授業なのか・評価の方法が分からないという面はあるが、ある程度の規模の大学・学部であれば応募者の中での分布を見るだけでも良い。学校と平均成績だけ見て足切りをすればよい。勿論、社員が直接推している学生は別に分けておく。

大学の試験がある程度重視されるようになれば、真面目な学生は大学の試験の適正な実施を要求するし、大学側も成績の分布や試験の質に気を使うようになるはずだ。学生が誰も成績を気にしていない(=審査に使えない)ため企業も気にしない(=学生も気にする必要がない)という状況が、企業が気にするので学生も気にする(=審査に使える)という状況になればこんな無駄は排除できるはずだ。会場を借りるよりウェブが安いのなら試験をしないのはもっと安い。

追記

@Hirohyさんから以下のようなコメントを頂いた:

ちなみに昔の弁護士就職市場では成績より司試合格までに要した年数というシグナルの方が用いられてたから成績を気にしない学生が多かったが制度改革(増員)後は前者がシグナルとして機能しにくくなりLSの成績がシグナルとして使用され始めた。

学生と企業が成績を重視するかは相互に依存しているため複数均衡状態になっていて、均衡が移動するためには外生ショックが必要になる。弁護士業界においてはロースクールの全面的に導入がそのショックとなり、移動が起こったと考えられる。