就活留年

内定がもらえなかった学生が卒業要件を満たしていても留年できる制度が広まっているそうだ。

就活留年制度:今年ダメでも「新卒」で再チャレンジ 大学公認、増える採用校

就職が決まらなかった学生が、翌年度も就職に有利な「新卒」で就職活動ができるように、卒業要件を満たしても在学させる「希望留年制度」を設ける大学が増 えている。あえて単位を落として就職浪人するケースは以前からあったが、大学公認の留年制度の広がりは厳しい就職戦線を映し出している。

公式な制度として存在しなかっただけで現実には就職浪人という人が以前からよくあったのはその通りだろう。自分のまわりでも結構いた。大学の就職する人が少なかったり、留学したりと「就活」に乗り遅れる話はよくあった。

卒業に必要な単位を取得した学生でも、希望すれば留年が可能で、授業料は基本的に半額。

卒論を出さずに前期休学すればいいので実質的な差はない。ちなみに留年に関してはアメリカは先進国(?)だ。

4-year colleges graduate 53% of students in 6 years – USATODAY.com

Nationally, four-year colleges graduated an average of just 53% of entering students within six years

四年制大学を六年以内で卒業する人は53%に過ぎない。そもそも六年卒業率を指標にしているところからして留年の多さが分かる。もちろん大学により数字は大きく異なり、

Harvard University boasts one of the highest rates, 97%. Southern University at New Orleans, which faced upheaval in 2005 with Hurricane Katrina, reported 8%.

学生の選別が厳しかったり、授業料が高かったりすれば当然六年卒業率は上がる。U.S. Newsには四年卒業率のランキングすらあるが、90%あればTop 10に入れる。日本の大学でも卒業にかかる年数は伸びて行くのだろうか。

上がる学費

教育費が年々上がるという話ではなく、同じ生徒の学費が毎年上がるのは何故かという話。そういえば日本の国立大学の学費は毎年上がっていたような気がするけどそれとは別。

Dear Economist: Should I try to make school fees fairer?

I’m a marketing manager at a British private boarding school. Fees start low and increase during a pupil’s education regardless of the fact that costs remain pretty constant before inflation. I want to reflect this “flat” cost and reward loyalty – but how can I without an ugly hike at reception class?

質問に対する答えという形式をとっているTim Harfordのコラム。実際、ショッピング中にどうしてこれはこういう値段の付け方なの??と聞かれることはよくある。。ちなみに、「ああそれは…」などと真面目に答えると、「そうアンタ達のせいでこういういやらしいプライシングになるのね」などと返されること請け合いだ(説明は後付で価格の付け方自体は昔からあることが多いわけだけど)。

今回のお題は私立(寄宿)学校の学費で、一年目から段々と上がっていくと言う。質問者は費用が一定なのだから価格も一定に、フェアに、すべきではないかと言っている。

Let’s take a step back. You say that you’d like to reflect costs. Why? Most businesses set prices to attract customers and increase profits. Costs are not directly relevant.

これに対する返答がなかなかいい。そもそも費用と価格を連動させる直接的な理由はないという。そりゃそうだ。基本的には相手が払う気がある限り価格を上げればいいだけの話だ。もちろん余り利幅が大きいと競合相手に客を取られるという懸念があるので価格を抑えるという話はあるだろうが、それはフェアかどうかとは関係ない。

Most companies say they reward loyalty, but it is more traditional to gouge loyal customers while chasing new ones. Don’t fall for your own propaganda.

ロイヤルな顧客を大事にするというのはよくあるスローガンだが、その心はロイヤルな客のほうが価格を上げても大丈夫だからであって、ロイヤリティそのものが重要ではないという話だ。

また「費用」といったときにそれが何を指しているのかも実ははっきりしない。例えば企業にとっては遊休設備があればコスト割れしても売った方いいことも多いわけだが、この場合の費用とは何だろうか。会計上のそれで言うならこれは赤字取引となる(もちろん会計原則には経済のそれとは違う意義があるので会計処理がおかしいという話ではない)。

Parents will be nervous about whether the school will suit their children, so a cheap price year in reception is sensible.

では何で最初安いのかというと、それはお試し期間だからだ。こういうと学費のようには聞こえないが本質的には同じことだ。ディアゴスティーニと変わらない。

The only reason to change your current pricing is if you can figure out a way of concealing some of the later fees.

改善の余地があるとすれば、いかに価格の上昇を見えないようにするかだ。これは各種証明書の発行費用を上げることで達成できる。流石にそこまで費用を計算する人もいないだろうし、将来どれぐらい払うかも分かりにくい。

国際開発のキャリア

最近、就活の話題をよく目にするのでもう一つエントリーを紹介。

Blood and Milk » Blog Archive » Finding Funding

国際開発のスペシャリストがどうやってそのキャリアを始めたかを説明している。しかし、その内容は開発という特殊な分野にだけ当てはまるというよりも、「アメリカの就活」で紹介した一般的な「就活」と本質的に変わらない。

It was an unpaid position with a multilateral organization in Tashkent, Uzbekistan, and it pretty much launched my global health career.

最初はウズベキスタンでの無給での仕事から全て始まったという。ではどうやってそのためのお金をもらったかという質問が沢山くるという。

I didn’t get funding. I estimated how much it would cost me every month to live in Tashkent. I figured out how long I wanted to stay – six months. Then I got a job, saved up my money, deferred my student loans, and got on the plane to Tashkent.

答えは単にもらえなかったというものだ。月いくら掛かるかを計算し、滞在したい期間を決め、そのための費用を働いて貯金し学生ローンの返済を延期して容易したという。

I actually ended staying at my internship for a full year, funding the extra six months with a US government fellowship that no longer seems to exist.

しかし、結果的に滞在は一年に延び、延長した分の費用は政府のフェローシップによってまかなわれたそうだ。

It led to the job that led to my next job and so on and so forth until here I am now with enough experience that I believe myself capable of blogging about it.

ここから次の仕事、その仕事への繋がり、十分な経験を得るに至っている。

But I got to Tashkent on my own, and I don’t think I could have gotten that fellowship if I wasn’t already there.

しかし、同時に最初のフェローシップを得たのは既に現地にいたからだという。これはインターンシップによって経験を積み、ネットワークを作ってキャリアを形成していくというアメリカでは普通のパスだ。

日本人も国際的な場所で活躍しようというなら、これだけの条件を揃えればいつ頃に行けるみたいな皮算用をするのではなく、自分から打って出る行動力が必要だ。仮に皮算用通りに事が進んだとしても、身一つで始めた人間と同じ力がつくとも思えないし、既に築かれた信頼関係なしに同じ結果を出すことはできない(同じことを言っていたとしてどちらに説得力があるだろう?)。

女性の出世は何故遅い

結構微妙な記事が多いHBSだが、女性の出世に関する面白いネタがあった。

Women in Management: Delusions of Progress

アメリカでは女性の社会進出は目覚しく、労働人口においても肩を並べている。しかし、社内での出世に関しては有意な差があるようだ。

Even after adjusting for years of work experience, industry, and region, Catalyst found that men started their careers at higher levels than women. […] Among women and men without children living at home, men still started at higher levels.

その差は職務経験・産業・地域・子供の有無を調整しても変わらないとのこと。では何が原因なのか。面白い調査結果が挙げられている。

A quarter of the women in our study left their first job because of a difficult manager—nearly as many as those who moved on for more money (26%) or for a career change (27%). Only 16% of the men left because of a difficult manager.

最初の職を辞めた理由を調査したものだ。こちらも条件付されているのか分からないが、上司とうまくいかなかったという理由が男性に比べて多い。

Of course, these results suggest that women and men may be treated differently by their first managers.

とはいえ、ここから男女が上司に違う扱いをされているのはOf courseとか言われると何だろうか?という気にはなる。女性のほうが人間関係を重視するだけかもしれない(多分にありそうだ)。

Companies must acknowledge their failure on this front, learn why they haven’t succeeded, and come up with better programs to help talented women advance.

その挙句、企業はこの問題を解決して有能な女性の進出を助けなければならないとまで言われるとどうだろう。もし男女の出世における差が単なる差別に基づくものであるなら、差別されている人を優先的に雇う企業は競争で優位に立つはずなので市場にまかせておいてもいいはずだ。

などと少し真面目に考えてしまったものの:

Catalyst works with businesses and the professions to build inclusive workplaces and expand opportunities for women and business.

記事を書いた人たちは女性のための職場環境を整える団体にいるようで、この記事自体が単なる広告のようだ。何か悔しいが書いてしまったのでポストしてみた。

エスニシティ別所得ギャップ

アメリカのエスニシティ別の所得の推移を示した綺麗なグラフ:

The US Income Gap | MintLife Blog | Personal Finance News & Advice

内容自体は極めて常識的で、白人およびアジア系の所得が高く、女性の所得は低い。但し、このことから直接結論を出すのは難しい。このグラフはむしろ単純なグラフを読む上での落とし穴を考えるのにいい。ぱっと思いつくだけでも以下のような問題点がある:

  • 平均所得であってメジアン所得ではないので、外れ値に大きく影響される
  • 労働時間で調整されていない;アジア系の所得が高いのは労働時間が長いためでもあるし、女性が低いのも労働時間が短い部分が大きいだろう
  • 推移だけを見るとギャップが開いているように見えるが、片対数グラフではないし、インフレが調整されていないように見える
  • 教育水準などで条件付されていないので、エスニシティ別の所得を見ているつもりで学歴別の所得を見ているだけかもしれない

最近アメリカではグラフを含めた視覚化を行うサイトが相当数あるが日本でも似たような試みがあると面白い。