デトロイトの縮小

追記:Willyさんのコメントが大変参考になります。

アメリカで最も急激に衰退していっている都市がデトロイトだ。世界的に見ても大都市が縮小していくというのは珍しい現象だ。

Goodspeed Update » Detroit

Since the middle of the 20th Century, no American city has experienced the severe economic shock experienced in Detroit.

デトロイトの没落が始まったのは二十世紀中盤だ。現在でも全米11位で100万人近い人口を誇るが、ピーク時には全米4位の都市だった。経済圏としては依然450万人近いが、人口の大半が郊外にスプロールしている。

Millions of jobs left, but new jobs were not easily accessible and often required high education levels. These so-called spatial and skill mismatches resulted in skyrocketing jobless rates among central-city blacks.

製造業の職がなくなったことにより、低スキルの労働者が都市中心から動けない状態で大変なことになっている。

それでも人口の流出は止まらず、今回の不景気で大量の空き家が発生している(ht @gshibayama)。

人の住まなくなった土地・建物では税金が支払われずに政府の所有になることも多く、市内にはやたらと政府の土地があるようだ。

こうした住居は段々と建て壊されており、市内の住居数は四十年間着々と減っていっている。

産業の転換により、ある産業に特化した都市が機能を終え縮小して行く。この時にどのようなことが起きるのか、どうすればできるだけ問題を起こさずに新しい均衡へ移っていけるのか、デトロイトはとても興味深い都市だ。

追記:デトロイトでは年収の1.5倍で家が買えるそうです(ht @Kelangdbn & @gshibayama

ネット選挙

ネットはマーケティングに欠かせない存在だが、政治活動にも必要だ。

ネット選挙 まずはホームページ更新から

選挙中のホームページ更新やメール送信は、はがきやビラ以外の「文書図画」の頒布を禁じる公職選挙法に抵触するというのが、現在の法解釈だ。

ウェブサイトの更新を認めるというのは妥当だろう。有権者が自ら閲覧するという点が単なるメールとは異なる。メールの場合はスパムを考えれば分かるように、送り手はコストを負担せずに勝手に送り付けることができるため慎重になる理由がある。同様の理由で自らフォローしない限り見ることの出来ないTwitterや登録が必要なメールマガジンも問題ないだろう(但し、後者については解除の方法を平易かつ画一にする必要はありそうだ)。

一方、ネット選挙の解禁に慎重な議員たちの間には、メールは他人が候補者の名をかたる「なりすまし」が容易で、虚偽情報を広めることに悪用される、と懸念する声が少なくない。

「なりすまし」を懸念する声もあるようだが、適切な手段を講じればいいだけの話だ。でなければオンラインショッピングなど出来るはずがない(注)。これを気に、ネット上でのセキュリティやアイデンティティの問題について包括的な啓蒙を行ってはどうだろう。

利用者が急増している簡易投稿サイト「ツイッター」でも、本人認証の仕組みが未整備のため、鳩山首相のなりすましが“登場”したばかりだ。

未整備なのは本人認証の仕組みではなく、議員やマスコミのリテラシーなのだから。

(注)SMTP自体はセキュアではないが、電子署名したりセキュアなサイトへ呼び込めいい。

追記:改変してRT=流布される可能性はあるが、それは他のメディアでも同じだ。それどころかネット上であれば一次ソース=発言を確認することもできる。ネットが使われている国でも政治家のなりすましが大きな問題となっているニュースは聞かない。

地域ブログ

地域をキーとした情報サイトが大きな注目を集めているそうだ。

「街興し」の切り札目指す 「地域ブログ」田舎に続々登場

「地域ブログ」を開設する目的はズバリ「街興し」だ。地元の人が自分達の持つ情報を交換しコミュニティー力を高めながら、全国、そして世界に情報発信しようという。

上の画像は最もアクセスが多いという沖縄のてぃーだブログだ。運営側が情報を提供するだけでなく、参加者がブログなどを通じて情報を発信できるようにもなっており、沖縄に関する情報のハブとして機能している。

運営しているのは1人から数人。それぞれ他に仕事を持っていて、いわばボランティア感覚でブログ運営に携わっている。「しーま」を運営するのは、奄美出身の30代の5人。それぞれ独自で奄美関係の情報を発信していたが、それを一箇所に集めることでパワーアップ、奄美の一大コミュニティーの場を作ろうと考えた。

こちらの奄美大島「しーま」の場合は仕事の傍ら五人で運営しているとのこと。ここでのポイントは地域での協力のありかただろう。こういった地域全体の振興というのは、自分が参加しなくても恩恵を受けられる。そのため地域振興は地方政府の仕事であることが多い。ウェブはそれを個人で行うことを可能にした。しかし、低コストゆえに一人で運営できても情報はある程度集まらないと価値がでないし、一人で運営していると話題を絞るのも難しい。

もちろんローカル情報へのシフトは日本だけではない。例えば上のサイトはBerkeleysideというバークレー市に特化したサイトだ。但し、これはごく典型的なブログで、読者の参加はコメントや、ポストのサブミッション程度だ。

このような地域ブログを組織化している企業もある。上はPatch.comというサイトで、地域レベルでの情報発信を行っている(@ayakomieさん就職おめでとうございます)。こちらの場合は地域振興というよりも、いかにローカルなジャーナリズムを維持していくかというのが主眼となっている。

地域レベルでの情報集約・発信への関心は高まっている。どのような目的・やり方ならうまくいくのか、地域といったときそのサイズはどの程度が望ましいのかなど、いろいろな課題はあるが地域という切り口で情報がより多く発信されより広範に広まるのであれば素晴らしいことだ。

追記

福岡には「よかよか」というブログサイトがあるそうです(ht @keitabo):

グレード・インフレーション

アメリカの大学の平均成績が話題になったのでご紹介。

National Trends in Grade Inflation, American Colleges and Universities

アメリカでは大学の成績が、少なくとも日本に比べると、重視されるというのは有名な話だ。特にコミュニティカレッジからのトランスファーや、メジャーの選択においては平均成績=GPA (Grade Point Average)が主な判断基準となる。就職活動の時にも履歴書(resume)にGPAを記載するし、足切りに使われることもある。

就職活動で使われるとなると、当然問題になるのが学校ごとの違いだ。特によく指摘されるのは公立と私立の差だ。上のグラフは一世紀近くに及ぶGPAの推移だが、どの大学も戦後急激にGPAが上昇し、それから徐々に上がっていっているのが分かる。特に私立と公立との差は開く一方だ。有名な大学を例にとると、Harvard 3.45 (2005), Yale 3.51 (2008), Stanford 3.55 (2005)に大して、Berkeley 3.27 (2006), UCLA 3.22 (2008) となっている。

ちなみに日本の大学を卒業するとやたらと低いGPAになってたり、成績の付け方がアメリカと異なっていたりする場合もあるがアメリカの大学はそのことを知っているので無闇に心配することはない。

意味のないテロ対策

インターポールの事務総長のインタビュー記事「The World’s Top Cop – A Talk with Ronald K. Noble」からの一節。インタビュー自体も短いが、皮肉がきいている。

Aguanomics: Bureaucratic or effective?

What frustrates me […] is that in 2009 there were over 500 million international air arrivals where passports were not checked against Interpol’s database, which contains records on over 11 million stolen passports and 9 million other identity documents.

昨年、到着旅行客数でのべ5億人がインタポールにあるパスポートなどの身分証明書盗難リストへ照合されていないとのこと。これは既に電子的に出来ることだ。

At the same time, if you or I are traveling internationally via the United States or Europe, we are required to take off our shoes and belts, give up our bags and our computers, and sacrifice whatever liquids we might not have consumed before passing through security. We do that for everyone.

その一方で国際線に載ると、靴を脱いでベルトを外し、液体は何ミリリットルとかいう規制がある。費用対効果から考えて実におかしなことだ。こういった規制が必要かどうかという議論をすると、感情的な議論になりがちだが、より効果的な方法があるのにやっていないという点をつくのは効果的だろう。